【文スト】ナカハラですが

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合図と同時に、大きな音が立つ

騒然とするパーティー会場の、見渡す限りを武装した集団が埋め尽くしていた




「うちの組織の全勢力をここへ集めました」

「…………」

「マフィアに勝つことは出来ずとも、多少なりとも痛手を負わせれば、当分手は出されないでしょうから」




山田さんも穏やかそうに見えて、立派な裏社会の人間だったという訳だ

やっぱりその物腰の柔らかさの奥に、策や思惑を蔓延らせていた

逃げ惑う人も居れば、落ち着いた行動を見せる人も居て、きっと後者は山田さんのお仲間なんだろう



「さあAさん、出来れば貴方は助けて差し上げたいのだが、これでもまだそちら側に？」

「わ、たし、は……」



出た声は、出すつもりだった半分の声量で

少なからず私は怯えてるのかもしれない

こんな風に、数え切れないほどの銃口を向けられたのは初めてだったから


けれど生憎、仕事柄こういうのは覚悟済みだ

依然として繋がれたままの手が握り直されて、行くなって、大丈夫だって、強く強く伝わってくる

「残念ですが」って、ほら、山田さんを真っ直ぐ見据えてはっきりと





「私、そのうちちゃんと、中也んとこに嫁入りする予定なので」





中也が居れば、何にも怖いことはないでしょ？

一度啖呵を切ってしまえば、私はいつもの減らず口を取り戻す

私だって中也の手をうんと握り返して、得意げな顔も見せたりして




「中也もマフィアも負けません！」




ああ、いつか私が零した『中也に作戦なんて要らない』ってあれは存外正しかったのかも

ついさっきまでは、壮大なパーティーの会場だったこの空間

でもこんなの、中也が暴れるには狭過ぎるくらいだ



「……多分、ですけど」

「ふはっ、そこは云いきる所だろ莫迦」



もう何回目の『莫迦』になるだろう

中也って奴は本当口が悪くて、自分勝手で、いつも余裕綽々だけど

全部許せちゃうくらい恰好良い



「おいA、ドレスを汚したくなきゃ隠れとけ」



云われた通りにするけど、別に、汚れたって大切なドレスには変わりっこないんだから




「＿＿すぐに終わらす」



刹那、中也の目付きが変わるのに応じて、控えていたマフィアの戦力も姿を現せば



「け、怪我したら殴るから」

「本当手前は素直じゃねえのな、＿＿＿大丈夫だから安心しろ」




さあ、準備は整った

銃弾の雨が舞う、世にも物騒なパーティーの幕開けだ



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