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「…………っはあ、緊張した」
用件を出来る限り手短に済ませ、まるで急かすように扉を締め切った
直後、私はそのままもたれて座り込んだ
「昨日の今日で、どんな顔して話せば良いか判んないじゃんか、中也の莫迦」
バレてない、バレてない筈だ
だって自然に振舞ったし
昨日のあれから私が中也を意識し始めたなんて、中也は夢にも思わないんだろう
あーあ、何か悔しいかも、って
「どうせ中也は、昨日のこともお酒のお陰で忘れてんだろうけ__ど、わっ、いだっ!?」
感傷に浸る最中
突如体を預ける私の方へと押された扉
「あ? 何だ手前、まだこんなところに居たのか」
「もう、ちょっと中也! そんな急に強く扉開けたら危ないじゃん!」
「仕方ねえだろ、急いでたんだから」
なるがまま前へ飛び出した体は無防備で、何とか手を突いて踏みとどまったけど、背中を襲った衝撃が地味に痛かった
急いでた、って、今さっきまで私と会ってたっていうのに急用でも出来たのだろうか
「手前を追い掛けるつもりだったんだよ」
「……、は?」
何で私を
「今からちょっと顔貸せ」
「えっ」
先約でもあるのかとか
俺と一緒に来るのが嫌なのかとか
そういうことじゃなくて、中也が私をここ__高級洋服店__へ連れてきた理由が知りたかった
返事を待たずに手を引かれて、有無を云わせず幹部様の車へ乗せられて、その助手席で運転する姿を眺めさせられて
それで今は、何でかは知らないけど、私にドレスを探してるご様子だ
「ねえ、中也ってば!」
さっきから訳を尋ねれど尋ねれど、もらえるのは適当な空返事ばかり
我慢出来なくなって、中也の黒外套をぎゅっと掴んで頬を膨らませたら
「手前、昨日のことは覚えてねえのか?」
いつぞやのように、まさかの質問返し
何がまさかかってその内容だ
昨日のこと、とかいう、回りくどい表現でもすぐに思い至るあの出来事
もちろん覚えてるに決まってる、というか、むしろ中也の方こそ覚えてたの?
「あれはなかったことに」
してくれて良いから、とは云えなかった
云う前に、私の続きを遮るようにして被せられた中也の低く鼓膜を揺らす声が
「なかったことになんざしねぇよ」
そう云ってにやりと笑みを浮かべる
だから、と、私から視線を外さず人一倍妖しい笑顔を浮かべて中也は
「大人しく俺の見繕ったドレスで着飾れ」
良い女にゃ相応の装いが必要だろ、なんて
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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