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「あ、どうぞごゆっくりー……」
そんな台詞を捨て置き、逃げるようにこの場を去る彼奴の後ろ姿
直後、打って変わった声音で俺を呼ぶ青鯖に、舌打ちしながら振り返った
「どうせ君も来るだろうと思ったからね」
ああ、胸糞が悪い
手前のその目を見ちまったら、話に耳を貸さざるを得ねえだろうが
こんな奴相手でも相棒の勘が働くってのが皮肉だ
「君にとっておきの情報を用意したよ」
「良いからとっとと話しやがれ」
急かす俺にいちいち肩を竦めたりしながら
太宰は俺と目を合わせることなく、ブランコの周りを囲う柵に腰掛けて云い放った
「彼女に目を付けてるのは君だけじゃない」
言葉にはまだ続きがある
「彼女と取り引きのある組織の者なら、皆森さんと同じ考えに辿り着く」
「……そりゃあ、つまり」
そういうことだよ、と明言せずに肯定する太宰
俺はもう一度大きな舌打ちをした
どうやら俺は、どうも面倒くさい奴に惚れちまったらしい、彼奴を手に入れるには、敵に回す輩少なくないようだ
まあ、負けるつもりはねえんだが
「どうだい、とっておきだろう?」
包帯の端を弄りながら、太宰が笑う
「何で俺に告げ口すんだよ、手前が横からかっさらうことも出来たんじゃねぇの」
「さっき散々嫌がらせしたから、もう疲れちゃったのだよね、それに」
ちらり、と一瞬こちらへやられた目線
おい、本当に何で、手前がそんな顔すんだよ
次の瞬間にはまた飄々と戻ってるくせに
「私より、中也の方が適任だもの」
__変な組織からAちゃんを守るのにはね
今度はその蓬髪を指先で弄り始める太宰に、俺は無意識に眉をひそめる
それに気付いた太宰は、心底呆れたように
「勘弁し給え、君も鈍いのかい」
溜め息を残して、立ち去っていった
「あ、中也!」
公園を出た並木道、俺の足を止めた声
俺が姿を探す前に、向こうの方から、俺の視界へ飛び込んできた
「中也と一緒に帰ろうと思って」
「そうかよ」
「……、嫌だった?」
「んな訳あるか、おら、行くぞ」
立ち止まる其奴の手を、努めてさり気なく引いた
待ってるとか反則だろ、って衝動で思わずそんな行動に出たものの
握り返してくるわ、離さないわ、何処かご機嫌に笑って見せるわのA
あの莫迦、とことん腹立たしいな青鯖の野郎、何が『中也の方が適任だもの』だ
落ち込ませた後に期待させやがって、くそ
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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