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「うげっ、幸せと絶望が同時に押し寄せた気分」
ヨコハマ某所、と或る物静かな公園にて
ブランコを囲う柵に腰掛けた蓬髪の彼は、私と、隣の帽子の彼を見るなり声を上げた
「Aちゃんだけで良いのに」
「誰が二人きりにさせるかよ」
晴れ渡る、青く澄んだ空
天気予報によれば今日は一日好い天気だそうな
そんな空模様とは対照的に、私を挟み視線で挑発し合う二人の雲行きは、それはもう怪しくて怪しくて
___ど、どうしよう
「何、マフィア暇なの?」
「んな訳ねえだろ」
「じゃあ何で来たの」
「手前がろくでもねえ奴だからだよ」
低くて威圧的な中也の声
淡々と煽るような太宰さんの声
太宰さんは足を洗った身と云えども、『私』と『双黒』、だなんてとんでもない構図
こんな恐ろしい三者面談、後にも先にもこれっきりにしたいと全力で願う
「あーあ、私今日、Aちゃんをスカウトするつもりだったのに」
そんな私の隣で、太宰さんは肩を竦めて息を吐き、やれやれといった表情を見せた
「__手前、今何つった」
直後、中也の目の色が変わって
「Aちゃんを探偵社に勧誘する、って云ったけど?」
「……えっ、わ、太宰さん!?」
ただでさえ理解の追い付かない私が、いつの間に、太宰さんの腕の中へ飛び込んだのか
そんなこと、判る訳なかった
「手ッ前__ 」
「探偵社においでよ、Aちゃん」
「わ、私はっ! 今、中也と仕事してて!」
急激に詰められた距離に、対処の仕方も落ち着き方も何も判らなくて
とりあえず浮かんだままに主張すると
「どうせ森さんの計らいなのだろう?」
「首領の、計らい……?」
「___チッ」
太宰さんの言葉って、たまによく判らない
私が今、中也と居るのは、あながち首領の頼みごとってな所以で間違ってないのだけど
今、なんで、中也がそんなに顔をしかめたのか
太宰さんの言葉がきっと含む、言外の意味は何?
「ででで、でも私、そんなに仕事が出来る訳でもないですし!」
肩に回され絡む太宰さんの腕に、どぎまぎして目を泳がせながら云えば
「おや、謙遜かい? Aちゃんが優秀なのはよく知っているよ、何せ」
ああ、中也の拳が震えてる
目に見えそうな怒気を放って、それだけで人をひれ伏せさせるような眼つきで
ものすごく機嫌が悪いことが判る
「私が幹部やってた頃からの付き合いだものね」
中也の手が、空を切って振り上げられた
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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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