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例のガラス張りのビルにて
一際重厚な扉を構える部屋の前、見張りの黒服の男ら相手に、休む事なく口を開き続ける女が一人
＿＿＿私です、ハイ
「どう思います？ 私はね、ムカついた！」
「は、はあ、そうですか」
「だって、わざわざ云わなくてもさ、ねえ？ 全く、マフィアの男にゃデリカシーってもんが無いのか」
もうぼろくそだ
最早目の前の、黒服の彼らもマフィアの男だってことをも忘れて、ただただあの男について
数日前、偶然にも同姓のマフィア構成員と鉢合わせした＿＿＿命名『ナカハラ事件』について
思うままに言葉を放り投げていた
「ほら、こんな風に！」
黒服らを背にして立ち、顔だけ若干振り返った
右手のエア帽子を頭上に被せる振りをして、ふわりと黒外套を靡かせているイメージで
云わずもがな、ナカハラさんの真似である
「こう、如何にも余裕ですって感じで……『ふっ、見惚れてんじゃねぇよ莫ァ迦』……って！」
「そ、そうですか」
口を尖らせる私と、困り果てる黒服
始終似たような返事しかしてくれないけど、私渾身のナカハラさんの物真似は、ちゃんと伝わっているんだろうか
「あー、もう！……別に」
腰を元のソファに下ろしながら、大きく長い溜め息がてら言葉を続ける
「……別に、そこまで見惚れてなんかないし」
確かに綺麗な顔立ちだったことは認めよう
くそう、イケメンこの野郎
でもだからって、あんなこと云われたら誰だって恥ずかしいに決まってるじゃん
それをあの男はにやにやと、しかも不意打ち、何も云い返せない去り際に
何てデリカシーの無い帽子なの
と、まあこんな風に、毒吐きは止まらない
「だいたい、ちょいと控え目な背丈なくせに何さ」
「…………」
「次会ったら、あの素敵な帽子ぶん取って、それから見下ろしてやるもんね」
「…………あの」
と、ここで唐突に黒服が話を遮った
「そ、そのお相手のお方は、確かにナカハラ様とおっしゃるのですね？」
「うん、ナカハラさん」
すると彼らが揃って顔を引き攣らせるから、怪訝に思って眉を顰めて首を傾げたら
「では、あの……今、ナカハラ様の後ろにいらっしゃるお方はいかがでしょう……？」
「…………え"っ」
ぎぎぎ、と上手く回らない首を何とか回し、云われた方を振り返ってみれば
「手前、誰の帽子ぶん取るって？」
あくまで爽やかな笑顔の、ナカハラさんが居た
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ライム - めっちゃ最高でした！！中也かっこよすぎてつらいです！こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます！！！！ (2022年12月26日 17時) (
レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 完結おめでとうございます！！きゅんきゅんしました…！ (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません！！(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
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