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と或る港町、ヨコハマの地

その夜の世界を牛耳る " ポートマフィア " の拠点の一つが、ここのビルだ



「__ふああ……」



遠慮なく大きな欠伸を響かせながら、広い廊下のど真ん中を歩く

今は夜、マフィアの時間帯

ビルは立派なガラス張り仕様で、最上階故の良い眺めが視界の端に顔を覗かせていた


___ガチャリ…

と、此処で前方に開く扉有り

音に何気なく目を遣ると、部屋の中から一人、男が出て来た

黒い帽子に外套なんてキザな背恰好、加えて、少し控えめな身長

そんな彼も私と目的地は一緒らしく、進行方向を同じくして廊下を歩き始めた


やたら長い廊下に響く二つの足音

ようやく先に待つエレベーターを確認出来た時、その扉が自ら開いた

どうやらこの階まで人を運んできたようだ




「ねえエリスちゃん、お部屋に戻ったら、まずは今日一番最初に買ったフリルのワンピースから着てくれないかい?」

「い、や! ケェキが先よ! 後マカロンとシュークリームも食べてから!」



降りてきた二人、男と少女の会話

私も彼も即座に道を空けて、深々と頭を下げた

最敬礼である



「全部食べたら着てくれるんだね?」

「うーん、どうかしら」

「ええ、そんなあ……」



人形のように愛らしい金髪の少女の言葉に、見事振り回され泣きべそをかく男

そんな彼は私と彼を一瞥すると、気を取り直すように息を吐いたかと思えば、途端にその表情を余裕を持て余した緩やかな微笑みへと舵を切る



「やあ、ちょうど良かった」



少女の手を引く男は、にこやかに云った




「ナカハラ君、ちょっと良いかい?」




呼び掛けられた名前

咄嗟に、しかし粗相のないように、私は顔を小さく上げて返事を返した






「何の御用でしょう」
「お呼びでしょうか」









「えっ」
「は?」






二度に渡る、帽子の彼との阿吽の呼吸

等しいタイミングで等しく驚きを漏らす声

男は__否、首領(ボス)は確かに『ナカハラ』と呼んだ筈、だから私は返事をした、のだけど

何故に帽子の彼も返事を?

思わず帽子の彼に向かった視線は、ばっちり彼のそれと交差して、間もなくその二つともが




「__え、ああ、そっか」




この場で誰よりも吃驚している首領へ向けられた




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ライム - めっちゃ最高でした!!中也かっこよすぎてつらいです!こんな最高の作品を生み出してくださってありがとうございます!!!! (2022年12月26日 17時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
なかはらあお(プロフ) - はじめまして、作品見させていただきました。お話の構成も内容もとても素晴らしく感動しかありません、どんぐり様のこれからのご活躍心より期待しております。長文失礼致しました。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: a71351843d (このIDを非表示/違反報告)
藍音 - 凄く面白かったです!私の名字もナカハラがよかった... (2018年2月7日 0時) (レス) id: a82b5889f9 (このIDを非表示/違反報告)
- 完結おめでとうございます!!きゅんきゅんしました…! (2018年2月1日 22時) (レス) id: c5a450a737 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - こんな時間に一気に読んでしまいました〜。眠たいのにドキドキが止まらなくて寝付けそうにありません!!(>_<) (2018年2月1日 2時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年9月13日 23時

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