【文スト】包帯アレルギー

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太宰さんが私に構うのは揶揄いやすいからで、私に気がある訳じゃなかったら

もし気持ちを伝えて、今の関係性が壊れたら


なんて、単に私には勇気が無いのだ

だからこの気持ちは云えない、伝えられない、なのに何で太宰さんは



「答えないのなら、また君を抱き締めるけど」



一歩、また一歩、じわじわ歩み寄ってくる太宰さんの靴音と交互に、私も覚束無い足取りで後ずさった

耳に絶えず届く、二つの靴音と、私の心臓の音

その合間を縫うように、太宰さんは言葉を紡ぐ



「そんな顔して」

「目も潤ませて」

「そのくせ私を何とも思ってないって？」



問い詰められる間にも遠慮なく縮められていく距離

莫迦みたいに熱い心臓が、体中に熱を運んだ

だからか、遂に背中と鉢合わせてしまった壁がひんやりとやけに冷たくて、背筋が伸びる



「答えがもらえるまで、逃がさないよ」



私の方へ進み続ける足を、止めてくれる気配の全く見せない太宰さん

もう私は、これ以上後ろへは退がれないのに


太宰さんの納得する答え、それは私にとっては告白を意味する

けれど、思い切って試しに『す』の形に口を動かしてみても、声どころか息すらろくに通らないほど私は臆病なのだ



「ねえ、本当は私のこと」



失われた逃げ場、降り掛かる声

好きだと白状してしまいそうで、でも羞恥心が足を引っ張る、どっち付かずなこの状況から抜け出したかった

逃げ出したい、でもどうしたら

どこかに何か、良い云い訳や口実でも落ちていないだろうか、なんてそんな中

ふと目に入った視界の端の太宰さんの綺麗な手

その腕にかけてを包む、真っ白な布




「────ほ、包帯アレルギーなんです！」




私は、一思いに言葉を発した



｢＿＿＿へえ、そうかい｣



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