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「___ああ、また思い出した」



探偵社に出勤する際に、必ず通らなきゃいけないこの川辺沿いの道

ここは私にとって良くも悪くも思い出の地なのだ


だってまさか、包帯の彼が探偵社の上司で、包帯の彼を助けるのが入社試験だったなんて

毎朝ここを通る度、あの日の驚きを鮮明に思い出す


___それは

衝撃がとてつもなく大きかったから、っていうのも理由の一つだけれど

一番の大きな理由は____


浮かんだ理由を胸に封じ込めて

溜め息を吐いた頃、ちょうど社に辿り着いた







「おはようござ__ 」

「やあおはよう、Aちゃん」


挨拶もそこそこに、ふわりと温もりに包まれる体


「わっ、ちょ、離して下さい!」

「嫌だよ」


例の包帯の彼、改め、太宰さんの温もりだ

細い割に私を抱き締めて離さない腕

見えなくても判る、頗るご機嫌そうな笑顔

少しの包帯の匂いと、男のくせにどこか甘い善い香りが私の肺を満たした、ちょうどそれと同時に

耳もとで、甘い声が響くものだから



「Aちゃん、良い匂いだねえ」

「そ、それは、太宰さんの方です!……あ、」



思わず云い返してしまった

今更口を両手で覆うも、時既に遅し

「ふふ、そうかい?」と嬉しそうな声と共に、太宰さんの腕が私の体を抱き締める力が強くなる

より太宰さんの体温が伝わって、服越しだけど、体中を太宰さんに包まれて

心拍が、大きく、早くなる

喜ばせるだけだって、判ってたのに



「Aちゃんと長く居られるなら、定時出勤も悪くないね?」

「関係なくちゃんと来てくだ…う、わあっ!?」



お咎めなんてどこ吹く風

太宰さんはそのまま私を容易く抱きかかえた

所謂お姫様抱っこに、恥ずかしくて敵わない

せめてもの抵抗に、やっと拝めた整った顔を睨み上げてみるけれど


「真っ赤になってそんな表情(かお)されてもねえ」

「っ……!」


余裕を纏う笑みで云われたらもう、反撃の手なんか思い付かなくて、無駄に綺麗な笑顔が憎たらしい



「ほら、大人しくしてて」



連れて行かれたのは、書類の山が出迎えてくれる太宰さんのデスク

椅子に腰掛ける太宰さんの、足の隙間に強制的に座らされて、後ろからまたまた抱き締められて


「あ、あの!」


次に、極め付けの一言



「今日の君の仕事、私を心ゆくまで癒すことね」

「はい!?」



そんな仕事、あってたまるか



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桜月(プロフ) - 完結、おめでとうございます!!太宰さんの仕草や言動のひとつひとつにすごく胸がきゅっとなって、、めちゃめちゃキュンキュンしました!とても読んでいて楽しかったです!! (2021年10月11日 0時) (レス) @page28 id: cb743e60b6 (このIDを非表示/違反報告)
千桜里 - はじめまして!太宰さんの心情や行動にとてもドキドキしました!!本当に面白かったです! (2020年9月29日 12時) (レス) id: d647e09f50 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタ娘(プロフ) - はじめまして。ヲタ娘です。すごく胸がキュゥ……として、フワフワっとしました! とっても面白いです! (2019年3月4日 20時) (レス) id: 737d873cb6 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 完結おめでとうございます!リクエストよろしければその後の話が読みたいです。お願いします。 (2018年3月7日 6時) (レス) id: 54de0e772b (このIDを非表示/違反報告)
月ノ輪(プロフ) - 完結おめでとうございます!すっごく可愛くて胸きゅんばっかしでした!他の作品も楽しみにしています♪ (2018年2月22日 13時) (レス) id: 3aab0973d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どんぐり | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月28日 2時

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