46話 ページ46
かつての庭だったところは遊戯場へと姿を変えていた。
Aはここまでの道のりには懐かしさを感じていたが、この光景に少しの寂しさも感じていた。あの頃の思い出は月日と共に消え去っていた。
その代わりとでも言うように、兄弟が増えると同時に砂場や滑り台、ジャングルジムなどの遊具が増えた。歳が近いキルアとアルカがよくここに来て遊ぶのだろう。
砂場には、2人分のスコップとバケツが片付けられずに放置されていた。バケツの中に少量の水も入っている。その砂と水で固めて作った山の近くに、ミニカーが埋もれていてたくさんの細かい粒が車体に付いていた。
また、木製のステップやネットの壁、それに繋がるように吊り橋が架けられている。公園というよりはフィールドアスレチックのようである。
「ボールやろうよ」
カルトは転がっていたサッカーボールに興味を示した。それまで繋いでいた手をぱっと離してボールに駆け寄る。Aは「いいよ」と言って距離をとり、ふたりで数えながらパスを続ける。
カルトは最初つま先で力任せに蹴っていたが、Aの安定した蹴り方を観てそれを真似した。そのおかげで、パスを連続で10回以上は続けられるようになっていた。
「カルトこれできる?」
Aは足裏でボールに逆回転をかけて、下からすくい上げるようにして地面から足でボールを拾う。そして、そのまま足の甲から太ももへとリズム良くコントロールする。
カルトはボールを自在に操る様子に「すごい」と言った。子供用のため小さめのサイズだったが、Aはリフティングを上手にやってのけた。ボール自体久しぶりに触ったが、しっかりと体が覚えていた。
「ボクも」
「おーやってみよ」
Aの技を間近で見たカルトは自分もやりたいと両手を伸ばす。まずは足の甲に乗せるところから始まった。そのまま跳ねさせようとするが、ボールはあっちこっちに飛んでいく。それでも、カルトは何度も挑戦して諦めなかった。
Aは「上手だね」などと褒めながらその様子を眺めていたが、ふと奥の樹木の方に人の気配を感じた。誰かがいるのは分かっているが、それは木々に隠れ肝心の姿は見えない。
「姉さんもう1回見せて」
カルトに急かされてAはまたボールを受け取る。遠くにいる人物は不明だが侵入者とは考えにくい。九分九厘この屋敷の使用人だろう。
それでも通常カルトに付いている執事なのか、誰かの命令でAを監視している執事なのかは分からない。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時