44話 ページ44
それ以降、Aが外出をする際にはこの歳になっても執事が必ず着いてきた。
気の知れたゴトーなどなら良かったものの、シルバに忠誠を持ったそちら側ばかりが付き添いだった。前まで楽しいと思えたものが、一変して窮屈なものへと変わった。
そして、Aはそれに嫌気がさして今ではほんとんどがネットショッピングである。自分の盾になってくれたゼノには申し訳ないと思っていたが、物欲だけが今のAを満たしてくれていた。
無心のままに人を殺して得る金がストレスを発散した。
その日々の繰り返しだった。
「いっきまーす!」
キャラクターの元気な声の後に、軽快な音がスタートの合図として鳴った。Aは縦長のプレイ画面の中で、カラフルな色の着いた丸い物体を積み上げていく。隣には相手の画面も同時に映し出され、同じ丸い物体が落下していた。
このゲームは積み上げたものを消していく連鎖とスピードが重要で、集中力が途切れた途端に全てが水の泡となる。
やがて、Aの画面では物体が上の方まで埋まったため、行けという気持ちでそれらを消していく。それなりに連鎖していき、キャラクターのカットインも入った。
しかし、相手の方が一枚上手だったようで半透明な物体が大量に落ちてきた。その処理に間に合わず、物体がバツ印に到達してAが負けた。
「ばたんきゅー」
初めの勢いはどこへやら、キャラクターがへたり込むように膝を着いて目を回している。何回目かの対戦が終わり、Aは電源を切る。そして、縮こまっていた体を伸ばすようにしてベッドに仰向けになった。
Aは以前よりもミルキとゲームをする頻度は減ったが、新作が出る度にふたりでプレイしていた。たいていの対戦ゲームを強制的に自主練させられたおかげで、最近ようやくミルキが満足するレベルの腕前まで到達した。
Aはゲームをするのを特別好んではなかったが、世話焼きの性質のせいか、ミルキのためならと長時間ゲームをするのは苦ではなかった。数少ない楽しみのひとつだった。
表向きはそうであれ、こころの奥ではこの繋がりが無くなることに対して、恐れを抱いていたなのかもしれないのだった。
いくつか寝返りを打ったAは、このまま目を瞑って一日を過ごすのも悪くないと思った。しかし、彼女は毎日あるわけではない仕事でしか外出していない。
となると、この自堕落な生活はまずかった。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時