30話 ページ30
岩肌が剥き出しの山々に囲まれた川辺に男と女がいた。
自然豊かなその場所は壮大な滝も流れており、地面には草木や苔が生い茂っている。また、それらを食料とする小動物も生息している。
その中で赤いハチマキに柔道着が印象的な筋骨隆々の男とチャイナ服を着る鍛え上げられた肉体美をもつ女が向かい合っている。そして、何かの合図があったかのように男が拳を振りかざし戦闘が始まった。
最初は互角に闘っていたようだったが徐々に男がふらつき始め、女が空中から繰り出した脚技で勝負がついた。
「今度こそミルキに勝てると思ったのに」
「姉ちゃんが弱すぎなんだよな」
目の前の画面に映し出される男の顔は、腫れ上がり鼻血を出していた。その表情を見たミルキが炭酸ジュースを片手に「間抜けだ」と笑っている。
2時間ほど前からふたりは格闘ゲームをプレイしていた。ミルキが最近買ったものでソロプレイをやり込んでいたのに対し、Aは何回かやったことがある程度でそんなに上手くなかった。
「だって見た目強そうじゃん?」
「そのキャラのコマンド覚えてきてよ」
プレイし始めから連続で負けているAはそれほど悔しがっておらず、連勝しているはずのミルキが不服そうな顔をしている。
自分が勝つのはいいが如何せん相手が格闘ゲームに慣れていなく、物足りないといったところだ。
実力を見せしめたい気持ちよりも、互角にやり合ってギリギリで勝つという達成感を味わいたい気持ちのほうが大きかった。
ゲームをする仲になったのはミルキが最初にAを誘ったことが始まりだった。ままごとを卒業し手持ち無沙汰になっていたところ新しい玩具を見つけた。
そして、これまでにAとミルキはお互いの時間があるときに対戦ゲームをしてああだこうだ言い合った。喧嘩になりそうになったこともあったが、そこは遊びだと割り切ったAが姉として弟を宥めた。
その面倒みの良さと甘えに漬け込んだのもあった。
「オーケー、がんばる。でもちょっと疲れた」
Aは「一旦休憩しよ」と言いながらぐうっと手足を広げて伸びた。同じ体勢で地べたに長時間座っていたせいで体を捻るたびに背骨の関節が鳴る。
Aは15歳、ミルキは10歳になっていた。Aは個人の依頼も受け付けられるようになり、仕事用の名刺も作った。それはイルミも同様でふたりとも多忙な日々を送っていた。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時