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28話 ページ28

「強気だねえ。今の状況わかってんのか」
「それどっちのセリフかしら」

「こっちの嬢ちゃんも素直にえ"お"っ」


色黒の男と少女が火花を散らす中、Aは目の前に迫ってきた男の顎を蹴り上げて手首を捻り拳銃を奪った。常人の目では追えないほどの速さで動き、慣れた手つきで弾倉から弾丸を取り出した。
金属がアスファルトに落下した音がし、そして振り返ることなく少女に言った。


「私、やれるよ」


それが合図だった。
少女も男たちを相手に次々と顔面や鳩尾に攻撃を繰り出した。無駄のない正確なその動きは武道の達人といってもおかしくはない。
見た目から想像できないほど一打一打が重く、大の大人が吹っ飛んで動けなくなるくらいだった。


「原石」


ボソッとAを横目に見た少女が呟いた。

Aは日頃の訓練のおかげで接近戦は得意としていた。視界の外からくる攻撃に対しても、それを予測していたように躱し後頭部に硬で強化した拳を叩き込んだ。

Aが念の修行を始めてから半年ほどが経っていた。ゴトーの教えの甲斐もあって基礎から応用までの全てをマスターすることができた。
相手が攻撃も防御もできないうちに決着がつくので、この程度かと拍子抜けするくらいだった。



そして直ぐに勝敗はついた。彼女たちに傷一つつけることはなく男たちは地面に倒れていた。ただ気絶しているだけで動けずに伸びている。
個々に闘っていたふたりだったが、息の合ったコンビネーションを感じていた。お互いなぜそんなに動けるのかは詮索せずに、どちらともなく顔を見合せてこの場を去った。


「あたしビスケ。あなたは?」
「私はA」


大通りまで戻る途中に今更ながらお互いを知った。
Aはどうしても気になっていた追われていた理由を聞いてみた。教えて貰えないならそれまでのことで、これ以上踏み込むつもりはなかった。

すると、ビスケは「詐欺に合うとこだったのさ」と経緯を話してくれた。あるオークションで競り落としたダイヤを企業が偽物とすり替えて、あのマフィアに横流しにしていたところを取り返しただけのことだった。
「イライラしてたけど発散できてスッキリしたわさ」とさらっと言った。


「なにしろ強行突破だったから追いかけられたってわけ」
「最初、あの店であんたと親しいふりしてやり過ごせたと思ったんだけどねぇ」


「巻き込んじゃったわねごめんね」とビスケは謝った。出会った第一印象とは変わり1枚だけ嘘の面を剥がせた様だった。

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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時

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