20話 ページ20
｢は？何それ｣
その声には苛立ちが含まれていたが、待たされたことに対してでは無かった。言葉を掛けられてもなお、隣に座るAは平然とした表情をしている。
だが、イルミの視線の先にあるAの右腹部には黒と混じった赤が滲んでいた。現在もじわじわと侵食し広がっていくことからそれは相手の血ではないことが分かった。Aは手で隠そうとしたが、イルミはすぐさま腕を掴んでそれを阻止した。
｢やられた。けど大丈夫だから｣
｢どこが？ターゲットは｣
｢ちゃんと始末した｣
｢ゴトー、止血して｣
Aのターゲットだった小太りの男はすぐに始末された。だが、戻ろうとしたときに知らない男に一部始終を見られていたことに気がついた。
Aと目が合った瞬間男が何かを撃った。避けたつもりだったが、何故か腹に痛みを感じ手を当てると出血していた。対峙したとき闘うことも考えたが、男の能力が未知数だったためAはその場から去った。
暗くて顔がよく見えなかったのが幸いだった。どれだけ戦闘に慣れていても勝率は100%では無かった。男を撒きながら尾行されていないのを確認するのに時間がかかり、ここまで戻って来たという訳だ。
｢警戒が足りないんじゃないの？死んだらどうするつもり｣
｢死んだらそこまでよ。私はイルミとは違うもの｣
その途中、Aは万が一にと持ってきていた神経毒を自分に打ち皮膚の感覚を遮断した。高濃度かつ多量であればAの身体にも作用した。即効性のあるそれで腹の辺りの触覚はほぼ無くなり、痛みで動けなくなる心配は排除された。自身が調合した毒は完璧だった。
｢A様、失礼致します｣
ゴトーは後部座席に移動し、Aの体をドアの方へ向けさせた。そして上の服を出血部位まで捲り、その程度を把握する。臍の横辺りに獣の爪で切り裂かれたかような切創が幾つかあった。
しかし、服には裂かれた跡が無い。深く抉られてはいたが皮下組織までは達していなさそうだったため、痕は残らないだろう。上から適当な布で圧迫し、それをガーゼ代わりに包帯で固定した。
｢相手は武器か何かを？｣
｢何か撃ってきたの。でも見えなかった｣
ゴトーは相手が何者であるのか予想がついていた。Aが対処できなかったのも無理はない。それに、致命傷もおわせられないレベルの使い手であるならそう警戒するまでも無かった。
応急処置が完了し、車を出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています！これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます！おかか様！ (10月8日 9時) (
レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです！ (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです！続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです！頑張ります！更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おかか | 作成日時：2022年1月23日 14時
