検索窓
今日:44 hit、昨日:5 hit、合計:104,018 hit

13話 ページ13

イルミと比べてAは比較的感情豊かな方だった。喜や楽を感じたときには素直に表現した。
しかし、嫉妬や憎もその分も膨れていった。自分の我儘で迷惑をかけないようにと相手を思って嘘もつけた。
裏を返すとそれは、これ以上自分の評価を下げたくないという自己保身のためでもあった。

Aは感情を押さえつけることはできたが、それが積もり積もったときいつ爆発するか分からなかった。容量が決められている箱にまだ入ると無理やり押し込んでいるようだった。


「ミルキって言うんだって」
「へえ」


Aはそのまま話を続けた。自分の話をするのは苦手だったが、人の話ならいくらでもできた。

しかしながら、喋る傍ら読んでいた本は文字の羅列を目で追うだけで内容は理解してなかった。
挿絵もないこの本をイルミは本当に最後まで読んだのだろうかと疑問に思った。途中でリタイアしていて欲しいぐらいだった。
タイトルを見て面白そうだと思ったから、手をつけたことの無い小説を持ってきたというのにこれでは無駄だった。


「3人で何して遊ぼっかなー」
「勝手に入れないでくれる?」
「いいじゃん」


Aは本を読むのを諦めて、手持ち無沙汰に脚をぶらぶらさせていた。ミルキとこれから過ごす時間を心の中に思い浮かべていた。会話というよりはほぼ独り言だった。

イルミには長男の自覚はあったが、下の子に何か世話をしてあげようとは思っていなかった。面倒を見るというよりかは躾、教え込む方が自分には合っていると感じていた。

そして、イルミはそろそろ次の仕事のプランが立ってきた。依頼人から提供された情報がこと細かに記載されていたので、それほど難易度は高くなかった。ターゲットの行動パターンを元に実行日を決めた。やっと父親に認められる日が定まり静かに心に火を灯していた。


「今度一緒に会いに行こうよ」
「嫌だね。1人で行けば?」

「何回も見に行く必要ある?」
「起きてるの見た事ないんだよね」



イルミとAはギブアンドテイクの関係を築いた。お互いに与え合い、持ちつ持たれつの繋がりだった。
ふたりとも、子供ながらに持つそれぞれの闇は肋骨の内側にあった。時々、思いもよらずにこじ開けられてそれを躊躇いなく掻き回された。

厳重に鍵をかけようにも、いとも簡単に入り込んでくるのであった。

14話→←12話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。