13話 ページ13
イルミと比べてAは比較的感情豊かな方だった。喜や楽を感じたときには素直に表現した。
しかし、嫉妬や憎もその分も膨れていった。自分の我儘で迷惑をかけないようにと相手を思って嘘もつけた。
裏を返すとそれは、これ以上自分の評価を下げたくないという自己保身のためでもあった。
Aは感情を押さえつけることはできたが、それが積もり積もったときいつ爆発するか分からなかった。容量が決められている箱にまだ入ると無理やり押し込んでいるようだった。
「ミルキって言うんだって」
「へえ」
Aはそのまま話を続けた。自分の話をするのは苦手だったが、人の話ならいくらでもできた。
しかしながら、喋る傍ら読んでいた本は文字の羅列を目で追うだけで内容は理解してなかった。
挿絵もないこの本をイルミは本当に最後まで読んだのだろうかと疑問に思った。途中でリタイアしていて欲しいぐらいだった。
タイトルを見て面白そうだと思ったから、手をつけたことの無い小説を持ってきたというのにこれでは無駄だった。
「3人で何して遊ぼっかなー」
「勝手に入れないでくれる?」
「いいじゃん」
Aは本を読むのを諦めて、手持ち無沙汰に脚をぶらぶらさせていた。ミルキとこれから過ごす時間を心の中に思い浮かべていた。会話というよりはほぼ独り言だった。
イルミには長男の自覚はあったが、下の子に何か世話をしてあげようとは思っていなかった。面倒を見るというよりかは躾、教え込む方が自分には合っていると感じていた。
そして、イルミはそろそろ次の仕事のプランが立ってきた。依頼人から提供された情報がこと細かに記載されていたので、それほど難易度は高くなかった。ターゲットの行動パターンを元に実行日を決めた。やっと父親に認められる日が定まり静かに心に火を灯していた。
「今度一緒に会いに行こうよ」
「嫌だね。1人で行けば?」
「何回も見に行く必要ある?」
「起きてるの見た事ないんだよね」
イルミとAはギブアンドテイクの関係を築いた。お互いに与え合い、持ちつ持たれつの繋がりだった。
ふたりとも、子供ながらに持つそれぞれの闇は肋骨の内側にあった。時々、思いもよらずにこじ開けられてそれを躊躇いなく掻き回された。
厳重に鍵をかけようにも、いとも簡単に入り込んでくるのであった。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時