検索窓
今日:43 hit、昨日:5 hit、合計:104,017 hit

2話 ページ2

そして、現在に至る。

絵本を読み終えたAはまた一冊、本棚から取り出した。

一般的に子供部屋といわれるこの部屋は、パステルカラーの壁紙とふわふわの絨毯の模様をしている。他の部屋からは想像も出来ないほど色鮮やかだった。

イルミはつい先程ここに来て、何冊か本を持って自室に行った。毎回、数冊選んで読み終えた本を戻しに来る。
彼にとってこの空間で過ごすのはあまり好きではないらしかった。

対して、Aは暇さえあればここにくるほど好きだった。いつもたくさんの可愛いぬいぐるみと、彼らぐらいの年頃の子供が喜びそうなおもちゃに囲まれていた。

先ほどAが選んだ本は、イルミが読み終わったものだ。

ふたりは産まれたときから一緒にいるが、Aはイルミが何を考えているか全く想像できなかった。
それもあってか、彼がどんなジャンルに興味があるのか少し知りたい気持ちがあった。


そして、Aはお気に入りの人形と絵本を持ってソファに移動し、読み始めた。





ふたりは協力して、いじわるな魔女をやっつけました。こころが通じ合っている双子だからできたことです。そして、町には平和が戻りふたりは英雄として称えられました。おしまい。



それは双子が活躍するお話だった。中に描かれている絵の双子は瓜二つの容姿をしていた。それでいて、とても仲良しで笑っていた。

Aはイルミがこういう本を読むのが意外に思った。いつも難しそうな内容のものばかりかと思っていたが、普通の子ども向けの童話も読んでいた。

この本にでてくる双子と違い、イルミとAはそんなに仲良しではなかった。話しかけるのはいつもAからで、イルミからはほとんど無かった。

ただ単に同じ家で同じ日に産まれただけの関係だった。同じ内容の訓練だから同じ場所にいる。特別な感情や絆はふたりの間では感じることはなかった。


Aは、もし、自分とイルミがこの物語の主人公だったら同じ結末にはならないだろうと思った。

「たぶん、イルミがひとりですべてやっつけて、私は少し離れたところでそれを見ているのだろう。それか、イルミは魔女なんかどうでも良くて、私ひとりでやっつけにいく事になるだろう」と。


そんな起こりうることも無い想像だけがAの頭の中で広がった。ただ時間だけが過ぎていった。

3話→←1話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
248人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。