犬系女子と飼い主系男子【梵天】

俺だけの ページ21

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佐野万次郎side





ぱち、目を開ける。



隣で寝ていたはずのAは、
寝ぼけて俺の口を吸っていた。



食べ物の夢を見ているのか、それとも寂しいのか。



キスではなく、ただ唇に吸いつくだけなのだ。
赤ちゃんのように。




そうやって本能で俺を求めているのかと思えば、
どうしようもない愛おしさが込み上げた。



今すぐ抱き潰してやりたいが、
まだ薬の抜けきってない身体に無理をさせたくはない。




唇を甘噛みして応えてやると、
安心したのかもぐもぐするのを止めたAを、
布団の中で抱き寄せる。




呪縛だとわかっている。



この自分の愛情は、Aを幸せにはしないのだ。
決して。



大切に思えば思うほど、いつか闇に飲み込まれて
壊してしまうかもしれないから。






『んんー』






Aが小さく呻いている。寝心地が悪いのか。



抱きしめる力をやや強めてみれば、
彼女の口元に柔らかな笑みが落ちた。



俺が今何を考えてるかなんて知らないで、
首筋に頬ずりしてくる。



ため息を止められない。




抱きたい。死ぬほど愛してやりたい。



その尻尾を掴んで、首輪を締めつけて。



俺だけの犬だ。誰にも渡さない。




十センチにも満たない距離に、
焦がれてやまない彼女が眠っている。




吸い寄せられるように唇を近づけた。







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