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第五十八話 見透かす瞳 ページ10

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思わず照れたように頬を掻く私は、何て言えば良いのか分からず困ったような笑みを浮かべた。






「…えと……ありがとうございます。…何か、乱歩さんにそんな風に褒められると照れますね」




素直に思った事を言えば、乱歩さんはそんな私をじっと見つめる。


微かに開かれた翡翠の瞳がまるで全てを見透かすような光を持っていて、私の秘密も全てバレているんじゃないかというような錯覚を覚えた。


思わず動揺して瞳が揺れる。そして私は戸惑ったような声を洩らした。







「…あ、あの…乱歩さん?」


「んー…?」


「…どうかしたんですか?」


「…別にー」




まるで何事もなかったかのように間延びした声を洩らす乱歩さんは、私から視線を外すと立ち上がる。






「僕そろそろ帰るね」




そう言った乱歩さんに私はハッとして時計を見れば、もう家を出てから大分経っている事に気づく。


私も乱歩さん同様に立ち上がると、少し緊張しながらも言った。






「あの、乱歩さん。…また、会えますか?」




そんな私の問いに乱歩さんは黙り、私をじっと見つめる。


そして完全に目を開けた乱歩さんの、いつもは隠れている綺麗な翡翠の瞳がはっきりと見えるようになった。





「…会えると思うよ」



どこか確信を持ったようなその台詞。何だかひどく嬉しくなって、私は満面の笑みを乱歩さんに向けた。





「次会った時は、また沢山乱歩さんの武勇伝聞かせて下さいね!」



そんな私の言葉に普段通りの子供らしさを取り戻した乱歩さんは、明らかに上機嫌になる。


誰かに自分を認めてもらえたという事が相当嬉しいのだろう。





乱歩さんとの意外な邂逅を果たした私は、高揚感を胸にそのまま背を向けて帰路を歩き始めた。




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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (2023年5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時

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