【文スト】太宰治の奮闘記録

極論 ページ18

.


あーだこーだと暫く、今日の葛藤とやってしまった事に対する後悔の念を一方的に吐いていると



「――取り敢えず」


と、眠そうな中也が話を纏めにかかった



「謝れ」

「きっともう会ってくれないよ」

「電話でも佳いだろ」

「厭だ会いたい」



即答で矛盾を云った私に中也は、「如何しようも無ぇクソ野郎だな」と

心外だが、自分でも思う


散々好きだと云い散らかして、挙句歯止めが利かなくなって手を出して、厭だと軽蔑されても尚会いたいと云う


我乍ら無茶苦茶である



彼女の厭がる事をする時は、必ず其れ相応の対価が伸し掛る


正に、今この状況が其れだ



「―――これは真に受けなくて佳いけどよ」



眠い目を擦り乍ら改まって切り出した中也


珍しい、いつもは云いたい事云うのに

私にそんな配慮をするなんて




「何？」

「如何したって手に入らねぇなら、いっそ滅茶苦茶に壊す手もあるぜ」

「何其れ」



資料を拾って立ち上がり、気怠そうに頭を掻き乍ら、寝室に向かおうとする中也が振り返った




「だって、如何頑張ったって手前のもんにはならねぇンだろ？そんで他の男に取られンのは癪じゃねぇか」

「そうだけど…」

「なら誰のもんにもなれねぇように手前で壊しちまえよ」




そんな極論、考えた事も無かった


当たり前だ、彼女を傷つけない事を大前提にしているのだから


だが、奇しくも今日傷つけた



なら、ならいっそ―――…




「――綺麗事だけが恋愛じゃねぇと思うぜ」





いっそ、私の手で彼女を壊してしまおうか


.

捨て台詞→←男の本能

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す