影山が大好きな奥さんの話。【影山飛雄】【HQ】 (ページ42)

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大切で大好きな。ページ42

Aside

A「あーほら、お父さん出てるよ」

私は胸の中で抱きしめている娘、愛花をテレビの方に向けさせた。

すると愛花はふわりと笑って、「あー！ぱー！」とテレビの方に手を伸ばしながらきゃっきゃと笑った。

ここは日本。オリンピック開催に合わせ、私達は3人で日本に帰国した。

元烏野メンバーとも飲み会をしたりして、数年前の感覚を思い出した。

海外での生活は思っていた以上に大変で、スーパーひとつ行くのに道に迷うし、お金の事や言語の事、近所の人との付き合い

沢山苦しい想いをしたし、飛雄が遠征で居なくなった時、ひっそりと泣いた夜もあった。

妊娠が分かった日は、1日放心状態になった

飛雄は嫌がらないだろうか。この子は、幸せになれるのだろうか。

練習から帰ってきた飛雄に「子どもができた」と言った時は、私以上に驚いて慌てた。

影山「お、俺は何すればいい？いや、まずは座れ！これからは俺も飯作れるようにするから頼れよ、明日スーパー寄って帰る、なるべく家でんなよ！」

性別どっちだろうな、いつ産まれるんだ？
やっぱり出産は日本の方がいいよな、俺も何とかして立ち会えるようにする

飛雄から出た言葉は私の思っていたものと全然違うもので、優しくて優しくて、私はその場で思わず泣いた。

飛雄の前で流した、数知れる涙のひとつだった。

出産は日本で行った。飛雄も立ち入ってくれた。

元気な女の子の泣き声が聞こえて、私は安心して気を失ってしまったらしい。

名前は、花のように皆から愛され、愛するようにと愛花と名付けた。

大きくなったら3人でバレーしようねと笑った。

大変な事は山のようにあったけど、それ以上に幸せで幸せで仕方ない毎日だった。

『影山のサーブからスタートです！』

その声を聞いてテレビに集中すると、飛雄がサーブ前のルーティンをやっている所だった。

すると飛雄はそれをピタリとやめて、テレビの方に目をやった。

目が、あった気がした。

心臓がどきりとして、私も飛雄をじっと見ると、飛雄はふっと笑った。

見てろよ。

声は無かったが、口の動きはそう伝えていた。

うん。見てる。誰よりも見てるよ。

これから先もずっと。最前線で貴方を見てる。
バレーにひたむきな、かっこいい君を。

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