7(終) ページ15
「いっしょ、いこ」
少女は数度瞬き、ふと泣きそうな顔になった。手を離し、そっと後ろに回した。それから穏やかに微笑んだ。
「ごめんね、今は一緒に行けないよ。でも後から行くから」
空間が引き伸ばされるように歪み始めた。芥川は彼等に背を向け、扉の方に駆けて行く。戸を開ける直前、芥川は背後を振り返って「有難う」と言った。
背後で扉が閉まる音がした。
それと同時に、一気に周囲の音が戻ってきた。近くで蝉が鳴いている。あの空間に入る前と同じ、強く匂る草木の匂いに、芥川は深く息をついた。腕を叩く子供を地面に下ろすと、子供はすぐに小さな手で古ぼけた戸を開けようと押した。
力及ばず、扉はうんともすんとも動かない。
「うー……」
「……今開けてやる」
戸を手で押し開け、芥川は子供と共に礼拝堂を覗き込んだ。
埃の積もった床に割れた硝子が散乱し、端にはゴミが投げ捨てられていた。奥にはステンドグラスからの光が扇状に伸びており、当然そこには誰も居ない。
「まなちゃん？」
子供が首を傾げ、あの場にいた少年少女のうち、孰れかの名を呼ぶ。
「みっちゃん？」
返事はない。
「ゆきちゃん？」
誰もいない。
「さとくん？」
芥川は膝を折って子供の背に触れた。少し寂しそうな、澄んだ黒い瞳が芥川を見上げる。
「もう此処には誰も居らぬ。お前も早く戻るぞ」
「みんなかえった？」
「ああ。屹度な」
そう言うと芥川は立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。子供の足が後からそれを追う。
──彼等が本当に帰れたのか、それとも未だあの空間に囚われ続けているのか、芥川には判らない。ただ、前者であれば良いと考えた。
月華さんリク『敦君か太宰さん関連で頗る機嫌の悪い芥川さんが怒鳴って手を上げてしまい、夢主ちゃんがそれ以降甘えなくなってしまったら』→←6
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ロト - こめ(元団子)さん» こめさん、ありがとうございます！芥川兄妹と幼児ちゃんがベビーカステラもぐもぐしながら帰るのを想像したらほのぼので悶えました(笑) (2019年8月31日 17時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» またリクします！「任務を頑張る芥川さんの為に、銀ちゃんに手伝ってもらいながら、夢主ちゃんがご飯を作る」というお話をお願いします！ (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» こめさん、リクありがとうです！知らない人から食べ物を貰うのは良くないって、本当に思いました。農薬入りのお菓子、怖すぎる・・！夢主ちゃんが食べなくて良かった〜！ (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ダークアリスさん» 了解です！ リクありがとうございます〜 (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 月華さん» リクありがとうです！ 書きましたけど人のじっとりとした悪意の話に…ww (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月23日 22時
