愛吐 35 ページ44
(あの日って、何があったんだっけ)
否、正確には自身であの日の出来事に蓋をしただけなのであるが。
本来なら忘れもしないバー、Lupinでのこと。
髪の毛も服も肌に張り付いていたあの気持ち悪い感触を私は未だに忘れていない。寧ろくっきりと鮮明に覚えている。
(若かったなぁ、あの頃)
「…捨てたって何さ。大体君た達お揃いのピアス迄しちゃって、ホント中也って独占欲の塊だよね」
「Aの準幹部昇進祝いに贈呈したんだよ」
「うわあ、趣味悪ッ」
そうかな、と思いながら耳を触る。
私は気に入っているので愛用し続けている。
「ああ気に食わねえ。太宰の顔も態度も服も全部だ」
「私も中也の全部が嫌いだね。好きなのは中也の靴選びの感性くらいだ」
「あ…?そうか?」
「うん、勿論嘘。靴も最低だよ」
「手ッ前ェ!」
…もう嫌だな帰りたい。
私はぼうっと遠くを見つめた。
「…ほら居たよ。あれだ」
そんなこんなで地下までたどり着く。
「助けを待つ眠り姫様だ」
太宰さんが指す先には樹木に身体を巻きつけられているQがいた。
太宰さんが木の根を切り落とすからと中也さんの元から掏っておいたナイフをQの首元に当てる。
「…止めないの?」
私は目を閉じる。私情を混ぜたら、絶対に止めるであろう。しかし彼は生きてることによって多くの被害をもたらす。
…だが。
彼は殺さない。Qが生きている限り彼の異能は必要とされるからマフィアに狙われることはない。それに、
Qについては彼と取引済だ。もし裏切ったら私が殺す。
「甘え奴だ。そう云う偽善臭ぇ処も反吐が出るぜ」
彼はそのままナイフでQの根を切り削いだ。
私はQの元へ駆け寄って手を握る。その手は冷たかったが、ほんの少しだけ指先が動いたことに安心した。
(無事で良かった)
「中也嫉妬してんじゃないよみっともないな」
「五月蝿ェ手前も鬼の形相でナイフ振りかざそうとしてるじゃねェか」
_______
「おいクソ太宰。その人形寄越せ」
「駄ー目。万一に備えて私が預からせて貰うよ」
それを発端にまたやいのやいのと喧嘩を始める二人。
いい加減飽きないのかな…私は無視して先を歩くが、こんな事では困る。
抑も、こんな簡単に終わるはずが無いのだ。
「手前が泣かした女全員に今の住所伝えるぞ」
ぴく、と耳が反応した。これは聞き捨てならない。
「ふん、そんな事…
…それはやめてくんないかな?」
…元上司の拗れた恋愛事情なんて知りたくなかった。
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時