6、最低な悪戯心 ページ6
先に起きた僕は、ぼんやりと彼女の寝顔を眺めていた。
ポアロのシフトは昼から。今日は休日だから、恐らくAの仕事は休みなんだろう。
それならば、無理に起こすこともないか…と考えた直後。
「ぅ、んんっ…」
唐突に寝返りをうったA。
「あぁ、起きました?」
僕がわざと明るい声でそう問いかけると、もぞもぞしていた彼女の動きがピタリと止まった。
「……」
起きているだろうに、口を開かない。
これは…今、何が起きてるかを必死に考えているんだろう。
彼女の焦りが手に取るように分かって、笑いそうになるのをなんとか堪えた。
「あ、あむ…ぴ…?」
ほんの少し間があって、ようやく思い出したらしい。小さく震える声でそれだけ呟いた彼女に、僕は『正解』と答える。
自分がキャミソールしか着ていない事実も、僕と一緒の布団で寝ているのも。
思った通り、僕の部屋に来た後の事を何1つ覚えていないらしいAは、大きな声を出しながらひたすらに慌てていた。
「あ、アムロサン…もしかして、わたし……やっちゃった…の?」
掛け布団で自分の身体を隠す彼女が、泣きそうになりながら呟く。
目が覚めてこんな状況じゃ、勘違いもするよな…と。
真実を告げることを真っ先に考えたが、思い止まる。
…昨日、散々Aに振り回されたんだ。
じわり…と。彼女に意地悪をしたい、なんて悪戯心が疼いた。
「まさか、覚えてないんですか?昨日のこと。」
「な、にも…」
「ふぅん?」
Aが忘れているのなら、僕と " 何かがあったかもしれない " と。悩ませてしまおうか。
頭では『最低だ』と思いながら、どうしても……彼女の慌てる姿を、もっと見たくなったんだ。
理由なんて分からない。
" 常連客 " としてではない…ただの、 " 絢瀬A " のことを。もっと知りたいと思ったのかもしれない。
「…っ、!」
布団を剥ぎ取って、簡単に壊れてしまいそうな程細い腰をぐっと抱き寄せる。
真っ赤な顔で僕を見つめるAに、ほんの少しだけ…ドキリとした。
「昨日の夜、すごく可愛かったですよ。」
『Aさん?』。
わざと耳元で囁けば、抱きしめる彼女の鼓動が早くなったのが伝わる。
「あれ?Aさん、ドキドキしてるんですか?……じゃあ、ついでに…もう1回、します?」
「…ぅ、ぁ…っ、」
肩を軽く押すと、小さな声を上げながら彼女の身体は簡単に布団へと倒れた。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時