5、夜の出来事 ページ5
ーー
「…ん、」
カーテンの隙間から朝日が差し込んで、深い眠りから覚める。
僕の腕の中には、Aがいた。
すやすやと寝息を立てる彼女の姿に、小さなため息が零れる。…ホント、危機感が微塵も無いな。
ぺちりと軽い音を立てて彼女の額を叩くも、一瞬眉を潜めただけでまたすぐに深く眠り始める。
ダメだ。まだ起きそうにない。
「ふぁ…」
軽い欠伸が出たものの、もう眠気はなく。頭はひどくスッキリしていて。
随分とぐっすり眠れてしまった事実に、苦笑いが零れた。
誰かが傍にいても、僕は眠れたんだな…なんて。
内心驚きながら、腕の中で眠る彼女の髪をそっと梳いた。
…昨日の夜。
まさか、あの状態の彼女と同じ布団で寝る訳にはいかないし。何処で寝ようか…
なんて考えながらシャワーを浴びた僕が寝室へと戻ってくると、意外にも彼女は一度目を覚ました。
「Aさん?」
瞼を開けたものの、ぼんやりとした様子の彼女は僕の呼び掛けに『…ん』と曖昧に返事をする。
「起きました?…僕が運びますから、部屋に帰りましょ…っ、」
「いかないで…」
彼女の荷物を持って来るため、立ち上がろうとした瞬間。Aが、僕に強くしがみついてきて。
「…Aさん?」
「一緒に、ねよ…?」
「寝ません。自分の家に帰ってから。ね?」
「や、だ」
僕の問いかけに首をぶんぶんと振ったまま、強く抱きついて離れない。
子供か。
…そもそも、 " 僕 " だと認識してるのかも怪しい。
『あむぴ』と呼ぶわけでもないし…
まして普段の彼女からは、 " 意図的に男に縋り付く " …なんて姿は想像できない。
となれば、完全に酔っ払ったままで。ついでに寝ぼけているんだろう。
これは明日、記憶が無さそうだな…。
「ダメです。勝手に運びますよ?」
「ぅ…」
仕方がないので、強引に抱き上げようとした直後。
「あつ、い…」
「ちょっ…!待て!…服を脱ぐな!!」
アルコールのせいだろう。僕の制止も虚しく、『暑い』と言いながら唐突に服を脱ぎ始めた。
「……はぁ」
やはり、一緒にいるのが僕だと認識していないようだ。
キャミソール1枚になった彼女は、バッテリーが切れたように、再び布団へと倒れ込んで寝息を立てた。
けれど、その華奢な手はしっかりと僕の腕を掴んでいて。
「……明日、驚いても知らないからな」
頬をそっと撫でると、気持ちよさそうに擦り寄ってきて。
小さく笑いを零してから、仕方なく。僕も同じ布団で眠ることに決めた。
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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時