27、手を繋ぐ場所 ページ27
ーー
「Aさん、おはようございます。絶好のデート日和ですね!……あれ?いつもよりお洒落してます?僕の為かな?可愛いね」
「ワァ………あむぴ…オハヨ」
土曜日の10時丁度。
玄関のドアを開けた彼女は、既に疲れきったような表情をしていて。
『何だか疲れてます?』なんて、笑顔で聞いてみた。
炎上が怖いんだろうな。…可哀想に。
先日、僕の家でいつも通りAと夕食をとった後…彼女に逃げられないよう背中に手を回して、頬を優しく撫でながら。
『ところで…僕と水族館デート、してくれますよね?』
と満面の笑みで聞いたら、小さく震えて『ァ……もちろん、デス』とぎこちなく頷いた。
現在、そんなAを迎えに来た所で。
" 迎えに " …というか。お察しの通り、隣の部屋のチャイムを押しただけだが。
僕を出迎えたAは、" 炎上は嫌です " と顔面に書いてあるように疲弊していて…内心、笑ってしまった。
…本気で嫌がっていそうなのに。
普段と違って髪を巻いたり、リップの色を変えたり、彼女に良く似合う…可愛らしいワンピースを着ていたり。
このデートのためにお洒落をしてくれたのかと思えば、純粋に嬉しくて。
僕は割と単純な男なんだと気がついたから、少し気はずかしかった。
「Aさん、もう出られます?」
「ん…ちょっと待っててね」
すぐにカバンを持ってきた彼女は部屋に鍵をかけて、振り返る。
じっと僕を見つめて、はにかんだ。
「ん?」
「あむぴ、…今日も、かっこいいね」
「ありがとう」
笑顔でお礼を言うと、Aは僕に手を差し出す。
「ん…じゃあ、行こうか」
「よろしくお願いします。久しぶりの水族館だ…やったぁ…」
家の周りに " 限って " 、彼女にとっては手を繋ぐのが当たり前になっているらしい。
夜ならまだしも……昼間だと駐車場まで向かう間、誰かに見られる可能性もあると思うけど。
僕から拒否をする理由も特にないので、何も言わずに彼女の手を取った。
「私、ペンギン好きです」
「そうですか」
車まで向かう間、ぽつりとそう言った彼女の足取りはひどく軽くて。
……水族館に着いてから手を繋いだら、どうせ叫ぶんだろうな。なんて考えながら、小さく笑った。
駐車場に車をとめて、炎上に怯えて震えるAの指を絡める。
「う、うわぁー!!手を繋がないであむぴーーー!!?!」
「騒がしいですね」
「アッ………すみません」
ほらな。
697人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時