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26、同僚達の心配 ページ26

「ここで大丈夫ですか?」
「うん、ありがと」

彼女に指定された訳でもなく、職場前で車を止める。

あぁ…そう言えば。
" 安室透 " は、Aの職場が『ポアロの近く』だとしか知らない設定だったよな…と、今更気がついた。

彼女の部屋を探ったあの夜に、僕は職場を知ったが。


当然のようにその失態に気がつくことも無く、笑顔で感謝を告げたA。

……ここまで能天気だと、お見事。

だからAの傍にいると気が抜けるんだ。


「行ってらっしゃい」

『行ってきます!あむぴもお仕事頑張ってね』と、笑う彼女の頬をそっと撫でて頷く。

最初は怯えていたのに、僕の助手席に乗ることもすっかり慣れた様子。


「あっ、…あむぴ?」
「ん?」

車を降りかけたAが、何かを思い出したように振り返る。
首を傾げると、僕のスーツの袖をきゅっと掴んで。


『……また、ポアロでね』。

そう呟いて、少し恥ずかしそうに微笑んだAは車を降りて走っていった。


「…」
僕は暫く、彼女の後ろ姿を見つめて。


いや。あれは…流石に。


「…可愛いよな?」








ーー


「あぁ、それと…今週の土曜は、休ませてくれ」

「はい!」
「迷惑をかけてすまない。…何かあれば、すぐに連絡を」

Aを送った後、警察庁へ向かった僕はひたすら溜まった仕事を片付けていて。
途中で登庁した風見と話していた…のだが。


「降谷さん、これ…水族館デートのポイントを纏めた資料です!!」
「こちらは、鈍感な女性を落とすための…」

「オススメのディナーを纏めてあります!」
「水族館以外のデートスポットはこちらに…!」


「…」

風見と2人で話していた筈なのに、気がつけばよく分からない資料を大量に差し出されていて。

…何だこれ。


「……いや、要らない…」


「降谷さん…っ!」

「彼女、こんな型にハマるような女性じゃない」
「え…」

ため息をついて、Aの事を思い返す。
…やっぱりよく分からない人なんだよな。


「言っただろ、変わってるって」


いや。僕は何故、同僚に恋愛の心配をされている?

周りの奴らが余りにも寂しそうな顔をするから、デスクの書類に目を通しながらぽつりと呟いた。


「それに、食事は…僕の料理の方が喜ぶから」


「…」

「…は?何故、急に黙って…」


「家に招く程の距離感ですか?!」
「どういう関係で…」
「やっぱり、付き合ってるんですか?!」


僕達の関係…か。

「ん?……" ただのお隣さん " …らしいな。」

27、手を繋ぐ場所→←25、彼女と朝食



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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時

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