え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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Aside

『ダイエット？
悠そんなこと気にしてたんだ？

ていうかそもそもそんな概念あったんだね』

｢うわーこの上なく失礼やな｣

事実、食い意地が張ってる悠にしては真面目な発言だ。

『なんでダイエットしてんの？』

｢なんでって、そりゃライブ近いもん。
筋トレもせなあかんし、大変やで｣

平然とそんなことを言いながらフライパンを火にかける悠からフライパンをとりあげる。

これ以上キッチンを戦場に変えられるのはごめんだ。

『え、ライブってスタッフも一緒にダイエットしなきゃいけなもんなの』

｢え？｣

『だって、だって悠は出演者側じゃないでしょ？
どっちかと言うとスタッフ側じゃん。
あれ、プロデューサーだったっけ？』

｢え、あ、あーーっと、う、うん、そうやねん！
よう言うやん、スタッフ一丸となってってやつ！

今回担当してるアーティストさんがすっごい真面目で努力家な方やから、スタッフみんなで頑張ろう…みたいな感じになって！
やから、みんなでダイエットとか筋トレとかしてんの！
ほんまにそれだけ！｣

私が思っているよりも音楽業界というのは大変らしい。

だから最近お菓子控えてたのか。

『ライブのためにダイエットとかアーティストさんだけかと思ってた…
今どきはスタッフさんも一緒になってやってるんだね』

｢…うん｣

すごい微妙な表情でレンジからおかずを取り出す悠。

『あ、それまだ熱いよ』

｢え？うわっ、あちっ！｣

若干涙目で大袈裟に手を振る悠。

言わんこっちゃない、と呆れてため息をつくとこちらを睨んでくる。

『保冷剤で冷やしといで』

｢う”ー、いだだだだだ…
見てみ、指めっちゃ赤いねんけど!!!!!!!!｣

『はいはい…
あづっ！』

軽くあしらいながらレンジからおかずを取り出そうとすると鋭い痛みが指に走った。

あ、熱いの忘れてた。

｢……同じことしてるやん｣

悠はにやにやしながらムカつく顔でそう言う。

でも、指をバカでかい保冷剤で冷やしている悠の方が間抜けに見える。

『一生の不覚……
あーいたた』

｢もードジやなぁ。
ほら、冷やしときよ｣

そう言って悠が持っていた保冷剤を押し付けられる。

｢あとはもう俺でもできるし、休んどいたら？｣

そう言われて渋々キッチンを出ていく。

ああ、キッチンを戦場に変えられませんように。

押し付けられた保冷剤を見つめていると、口元がにやける。

ただのやけどなのに、大袈裟すぎる。

『でも、そんなとこが好きなんだよなぁ…』

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