え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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Aside

｢なんで、なんで先輩がこんな目に遭わなくちゃいけないんですかあ……

こんなの、こんなのっておかしいです！

先輩は、なんにも悪くないじゃないですか！｣

林ちゃんの綺麗な目から涙がこぼれる。

周りの人も悲しそうな顔をしていた。

彼女の言葉が心にグサリと刺さる。

『……ごめんね』

ごめん、ごめんね。

なんでかなんて、私も分からないよ。

どうしてこんなことをされたのかも。

今回だって、昔のあの子たちだってそうだった。

何年経っても傷は治らなかったよ。

先生の“時間が解決するから”という言葉も、嘘だったなあ。

時間が一体なにを解決してくれたんだろう。

そのくせ、泣いても、どれだけ辛くても、結局責任なんかとってはくれないのに。

林ちゃんの言う通り、私悪くないよ。

全部全部、誰かの気まぐれだよ。

ただの気まぐれで、私の人生は大きく変わったのに。

なのに、あの子たちは謝ってもくれなかった。

きっと、どこかで涼しい顔をして生きている。

1人で部屋にいるのが怖くなった。

暗いところが怖くなった。

教室が怖くなった。

学校が怖くなった。

たくさん怖いものが増えた。

私が悪いのか。

悪いのは、なりすましの方じゃないのか。

私はこんなに肩身の狭い思いをしているのに。

『ほんと、なんでなんだろうね……』

笑うつもりが、口元がひきつって上手く笑えなかった。

目元が熱くなって、生暖かい雫が頬をつたった。

｢先輩、泣いてもいいんですよ。
あたし達はずっと味方ですから｣

『林ちゃ、ごめんねぇ』

｢いいんですよぉ。
あたし普段いっぱい先輩に可愛がってもらってるんで、今日はあたしが先輩を可愛がる番ですねぇ｣

林ちゃんに優しく促されるままに泣いた。

林ちゃんは朗らかに笑って、私の頭を撫でる。

家で泣いた時のように、声を上げて泣いた。

悲しかった。

虚しかった。

悔しかった。

怖かった。

でも、それ以上に皆の気遣いが嬉しかった。

林ちゃんと同じ後輩ちゃん達は、目に涙を滲ませながらハグをしてくれた。

磯田くんなどの後輩くんは、慌てて目元を冷やすタオルを持ってきてくれたりしてくれた。

先輩達は、それを微笑ましい目で見つめて私が出来るだけ早く復帰できるように努力すると約束してくれた。

美月などの同僚達は、仕事のことなら気にしないでと細やかなフォローをしてくれた。

皆のそれぞれの気遣いが痛いほど心にしみて、嬉しかった。

だから、これはきっと、嬉し涙だ。

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