え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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no-side

｢はあ、もう無理好きすぎ辛い…

＿＿＿ん、磯田どした？｣

手を頬に当ててうっとりしながらそう呟く女性社員の目線の先の磯田の顔は暗い。

そしてその隣には疲れきった顔で磯田を慰める社員。

｢あんなイケメンとか聞いてねぇよ…
くそ、顔だけなら勝てると思ったのに…｣

なんとこの馬鹿、本気で悔しそうである。

磯田の度を超える馬鹿発言に隣の社員の顔がさらに疲れた顔になった。

｢はあ？
あんたまだあたしの推しカプの仲切り裂くつもりでいたの？？
そろそろ懲りろこのバカナルシスト｣

｢一旦お前は黙れこの過激派｣

本気でキレている女性社員を、磯田を慰めていた数少ない常識人である社員がいさめた。

女の恨みは山よりも高く海よりも深いのだから気をつけるべきだということを彼はよく知っていたのだ。

｢？？
俺何か悪いこと言った？｣

｢おまえ。表出ろ。｣

｢磯田お前は黙っとけ！｣

そして極めつけには度重なる磯田の馬鹿発言。

もう無理、キレそう……誰か助けて……

そう思っているところに、誰かの大声が廊下から響いた。

｢あ、忘れもんしたー!!!
ごめんA先駐車場行っといてー！｣

ばん、と大きな音を立ててオフィスのドアが開かれ、青年が飛び込んでくる。

例のイケメンくんである。

よかった、彼が来たなら磯田も少しは口を閉じるはず……

彼の予想通り、磯田はピタリと口を噤んだ。

しかし、イケメンくんの方は忘れ物をしたと言う割にはオフィスの中を探そうともせずに、つかつかと長い足で磯田の元へと一直線に歩いていった。

｢えっとキミ、イソダくん、やったっけ？｣

にこりともせずに、上から磯田を見下ろす。

にこにこ顔で愛想の良かった先程とはえらい違いである。

その瞳の中には磯田に対する敵対心が見え隠れしている。

その顔もイケメンだけれど!!

磯田の隣の社員は嫌な予感をいち早く察知し、磯田の隣からすすす…とさりげなく離れた。

ナイス判断、いいよいいよ。

｢は、ハイ、そうですけど…………？｣

イケメンくんがおずおずと顔を上げる磯田にくいくいと人差し指を動かすと、磯田は不思議そうな顔でイケメンくんの元に歩いていく。

すると、おもむろにイケメンくんが口元に手を当てて磯田の耳元に何かを囁き始める。

そして、にたりと満足気なゲスい笑みを浮かべて彼が口元を離した時には、磯田の顔は真っ青に染まっていた。

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