* ページ16
───────
─────
───
「……42、42、」
微妙な席の列を呟きながら人の多いアリーナをかき分けて進む。確かに彼の言った通り男性リスナーもちらほらいた。でもそんな気にすることかな?と首を傾げているとやっと目的の席を見つけた。思ったより時間がかかってしまい、これは入る扉間違えたなぁと思いながら視線を向けると席の後ろに真っ黒なステージが出来上がっていた。
「わぁ、バックステージ」
なんて思わず呟きながら冷や汗が流れる。今日の予定としてはライブが終わってすぐ余韻を感じる暇もなく外に出て、電車を乗り継ぎ彼より早く家に着く。そして何食わぬ顔で彼の帰りを笑顔で迎え入れる。そういう作戦だった。それなのにこんなに近くては何もかもの予定が狂う。こんな近くては彼に見つかってしまう、なんて。贅沢な悩み。─────そうだ。もう開き直ってしまおう。見つかっても、知らない。私は鳥じゃなくて人間だから自分の檻も開けられるんだってことを思い知らせてやらなくちゃ。そう意気込むといつの間にか会場が一際暗くなり、辺りがざわめく。
「今から後ろに行くからね〜」
気づいたらライブも後半戦。めくるめく続いていく彼らのパフォーマンスに圧倒されながらも思う存分に楽しんでいた。そして、そんなメンバーの一言でなんだなんだと目をやるとトロッコが出現してきた。なるほどあれでバックステージに移動するのか、と納得をする。しかし冷や汗が止まらない。先程彼に刃向かってやると意気込んだのに、もう怖気付いてしまったらしい。逸る胸を抑えながらこちらに来るセンラをじっと見つめていた。そして、バックステージに降り立った彼と途端に目が合う。彼は大きく目を見開いたあと、怪訝そうに顔を歪めた。
口パクで送られた言葉にはニッコリと笑顔を返しておいた。帰ったら鍵を閉め忘れたあの日のようにコテンパンに絞られたのは言うまでもない。
「Aーー???」
玄関から聞こえてきたあのドスの効いた声と、目が笑ってない笑顔はどう頑張っても生涯脳裏から消えてくれない気がする。
253人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
潮田 陽菜(プロフ) - senkun1003さん» こちらこそ素敵なリクエストありがとうございました😊何度も読み返すほど気に入って頂けてとても嬉しいです(_ _*))こちらこそ素敵なコメントありがとうございます(*ˊᵕˋ*) (2022年11月16日 12時) (レス) @page48 id: 68f958ed6b (このIDを非表示/違反報告)
senkun1003(プロフ) - 潮田 陽菜さん» リクエスト答えて下さりありがとうございます😭凄い好みで何度も読み返してます😭素敵な作品をありがとうございます😭 (2022年11月15日 23時) (レス) id: 354fb7ca1c (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - senkun1003さん» コメントありがとうございます!!3次元に近い感じをイメージして書いてたので汲み取って頂けてとても嬉しいです(*^^*)リクエストありがとうございます!是非書かせて頂きますね!! (2022年11月14日 9時) (レス) id: 68f958ed6b (このIDを非表示/違反報告)
senkun1003(プロフ) - 思いました! すみません、書きたいこと沢山になってしまい長文失礼致しました。可能でしたらリクエストの方よろしくお願いします! (2022年11月14日 2時) (レス) id: 354fb7ca1c (このIDを非表示/違反報告)
senkun1003(プロフ) - (センラさんが遠征で居なくて寂しかった時の上着をぎゅってしてるところとかからそういうイメージを持ったので)で、そんな夢主にあまり得意では無いサプライズを計画して1日沢山笑わせて甘々してくれるセンラさんを見て、もっと甘えてええんやでって言われたいなぁと (2022年11月14日 2時) (レス) id: 354fb7ca1c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ