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give up. ページ8

ハンゾーはその問いには答えなかった。今、彼には下手なジョークを言えるほどの余裕がなかったからだ。そんなハンゾーの何もかもを見透かしたように、彼女は笑っている。

「わかんないなら教えてあげる。それは、まだお前が生きようとしているからだよ。ギブアップ?」

いつも彼女の言葉には真意があった。こんな状況であれを言われるのは殴られるより辛い。だから今、ハンゾーが降参するはずない。彼女はそれに期待してあえてそう言ったのだろう。

ハンゾー「…バカ野郎」

思惑通り、ハンゾーはもう一度立ち上がる。強い目でAを睨み付け、目があった瞬間、腕に巻いていた包帯の中から刃渡り30cm程ある刃を出し、ダーツのように投げつける。刃はものすごいスピードで彼女目掛けて空中を走る。
その間にハンゾーは彼女の背後に回り込む。大胆で、穴だらけの荒手の挟み撃ちに彼女が引っ掛かるはずもないが、それでもハンゾーは足掻いた。

遠目に見えたのは、困ったように眉をしかめて笑うA。照明を反射して光るナイフ。一瞬のことだった。
殴られたような鈍い音。空へ向かって跳ね上がるハンゾーの影。反対にカラン、と無機質な音をたてて床に落ちたナイフ。
彼女はほんの数秒間、漫画で言えばヒトコマのうちに銃を取り出し、飛んでくるナイフをそれで叩き落としてからハンゾーを天井目掛けて殴り飛ばした。そこに手加減はなかったし、とても人間業とは思えなかった。
少しして、ハンゾーが重力に負けて落ちてくる。衝撃で天井からパラパラとタイルの一部と埃が剥がれ落ちた。

ハンゾー「っ、がはっ」

背中から思いっきり落ちたハンゾーにAは休む暇を与えない。倒れているハンゾーの頭の方にしゃがみこんで、額に銃を突きつける。

「さぁ今日もお別れの時間がやって参りました。今夜のゲストはジャポンからお越しの24歳ハンゾーさん」

ふざけたような口調に、ハンゾーは少しだけ油断する。

ハンゾー「…俺はまだ18だ」

「うるせー口答えは無しだ」

ハンゾー「…チッ」

「いつまでも寝転んで立ち向かおうとしないなら私は引き金を引く。だってこれは火遊びの道具じゃないんだ。命の懸け引きに使う道具だよ。言ってる意味わかりますか?」

ハンゾー「…それなら俺も言わせてもらうぜ」

目の色が変わる。形勢逆転の手が浮かんでいるみたいに。

ハンゾー「もう二人とも助かんねぇよ」

ハンゾーが呟いたのと、大きな天井のタイルが落ちてくるのとはほぼ同時だった。

眉を下げて笑う→←Never, never, never, never



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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時

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