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番外編クロロ 1 ページ16

Aside

元仕事仲間を殺してたらそれを見ていた変な男に興味を持たれた。
ちょっとからかってやろうかと話していれば、そいつは年上なのは明らかなのに私に対して偉そうにしないし、丸腰で人の顔色ばっかり窺うのかと思えば二秒で人を殺したり、ファミレスで三万ジェニー分の料理を食べたりする変な男だということがわかった。逆にそれ以外は何もわからなかった。

なけなしの三万ジェニーを支払い、店から出た時にはもう日は傾いていて、そこらをオレンジ色に染めていた。一昨日まではこのくらいの時間に起きて朝御飯を食べていた。

クロロ「ごちそうさま」

“クロロ”と名乗ったその男は、満足げに私の顔を覗きこむ。まだ炒飯くらいなら食えますって顔だ。

クロロ「これからどうするの？」

「宿探し」

明日もう一度ガンショップ・エドワードを訪ねなくちゃいけないから、今日はこの町に留まるのがいいだろう。幸い金もあることだし。

クロロ「それならあの突き当たりを右に曲がったところに安宿がある」

地図なんて一度か二度見ただけなのに、もうこの町のこと私より知ってる。流星街の無力な子供たちは仲間同士で依存し合って生活してるから、彼みたいに一人でいるのは珍しい気がする。まぁ、私もだけど。

クロロ「じゃあ、明日また来るから」

笑顔で告げてからひゅるりと踵を返した彼に一瞬驚く。帰る場所がないからずっと着いてきたんだとばかり思っていたから。

「一緒に来ないの？」

後で思い出して一人で悶えることになる私の台詞も、今の彼はへらりと眉を下げて受け流す。

クロロ「帰らないと、あいつらが心配するから」

夕日が彼をオレンジ色に染めた。私は思う。悲しみなんて世界には存在しない。その代わり、愛されても、拒絶されても、いつだって一人。一人だ。そういう人生を私が最初に選んだ。今さら、それ以外の生き方なんてわからない。それなのに、私はちょっとだけ期待してしまった。一瞬、何もかも忘れて楽しんじゃった。

「うん。ばいばい」

優しさは傷になる。だからこれが最後だ。もう彼には会わない。