番外編 繋がろう 3 ページ13
「はぁ!?どういう意味だよ!」
人生で初めて交渉を持ち掛け、それに失敗した彼女はバン!!と力任せに机を叩く。俺にとっては他人事なのであの小さい手でよくこんな音が鳴るな、と感心するだけだが…。
目の前にいるどう見ても一般人ではない大男は煙草を灰皿に擦り付けてからAが納得するように説明を始める。
『お前の殺しの腕はよく知ってる。それに、最弱チームだったモラン組がここまで乗し上がってきたのはお前さんが居たからだってことも、この界隈の連中なら知ってるさ。だからこそ、ここでは雇えねぇって言ってんだ』
「その“だからこそ”の中身が知りたいの」
よほどここで雇ってもらえるという自信があったのだろう。一歩も引かないこいつに、大男は呆れたように溜め息を吐く。
『この仕事をやっていくにはな、信頼ってもんが一番大事なのさ。お前さんにはそれがねぇ』
なるほどな。確かにこいつは素性もよくわからない。おまけに給料を下げられたからという理由で前に雇われていたところを勝手に辞め、金まで持ち逃げしたという前科ありだ。
釣れる魚が大きい分、リスクも大きい。そんな一か八かの賭けに出るのは相当追い詰められている奴以外にいない。よってここでは絶対に雇ってもらえないだろう。
『そういうことだ。もう話すことは何もねぇ。さっさとお友達連れて帰りな』
**
事務所から追い出され、ムスッとしたまま歩きはじめたAに聞く。
クロロ「次は何処へ行く?」
「…多分どこの組にも私の噂はもう広がってるだろうし、こうなったら一番行きたくなかったところに当たるしかない」
やっぱりこいつは賢い。そんな素振りを見せなくとも失敗から何かしら学んでいる。だが、早くも最終手段をとったか。どんだけ行く宛ないんだよ(笑)
「ねぇ、“ガンショップ・エドワード”は何処?」
いつ手に入れたのか、Aはこの街の地図を俺に見せて言った。自分で見ればいいのに……
クロロ「えっと………ここだな」
トン、と現在地から少し離れたところにあるその場所を示すと、彼女は『ふーん、ここか』と呟いてからまた歩き出した。そうか。こいつもしかして、
クロロ「文字が読めないのか?」
「……悪い?」
意外な欠点を見つけて少し驚く。まぁ、流星街の子供は文字を知ってる奴の方が珍しいが……こいつもそうだとは思わなかった。苛ついてるのか、どんどん歩くのが速くなるAに置いていかれないように余計なことを考えるのはやめた。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時