番外編 繋がろう 1 ページ11
クロロside
散歩をしていたら知らないところへ来てしまった。森の中、視界に広がるのは手入れされていない墓、墓、そして墓。こんな不気味な墓地、夜なら逃げ出していただろう。今が昼で良かった。
もともと知らないところへ行きたくて散歩をしていたのだが、いざ来てみると帰り道の心配をしてしまうものだ。情けないな。嫌いだ。
もう何年も同じ場所で同じ様な生活をしてるから、それが安定として染み付いている。そんな毎日を最近少し嫌っていた。
流星街の人間は皆、いつも何処か闇を抱えて生きていた。いいや、背負う宿命にあるのだと思う。持って産まれたのだから、どう足掻いても捨てられはしない。誰もそれを変えられない。そういう現実から目を背けさせてくれる新しい刺激が欲しい。
ふと、耳をすませば森の奥が騒がしいのに気が付いた。最初は気にならないくらいだったが、その音は次第に近付いてきて…あと少しで影が見えそうなくらいまで近付いてくると…俺は物陰に身を隠した。聞こえた音は銃声と怒涛だったからだ。
「おいサブッ!G36だ!早く出せ!車のトランクに積んでる!」
30代半ばくらいのスーツの男が飛び出してきて部下に言い放つ。かなり切羽詰まってるようだ。“サブ”は言われた通り、近くの物陰に停めていた車のトランクから機関銃を取り出す。熊でも出たか?と思っていると、彼らを追いかけてきたのは人間の足音だった。
「く、来るなっ!撃ち殺すぞ!」
サブが威嚇する方から登場したのは女の子だった。ただの女の子ではない。拳銃を両手に二丁握っている。彼女は一度立ち止まり、男が自分に向けているそれを見て楽しそうに笑う。一瞬その目と目が合った気がして、鳥肌がたった。その間に彼女は再び歩きはじめ距離を詰める。サブの手はガタガタ震えていた。
「何してんだサブ!早く撃っちまえ!!」
もう一人の男の方も逃げ腰になって後ろへ後退する。あっちの方は弾切れか。つまりあのサブの機関銃こそが頼みの綱だ。それなのに、サブは一向に発砲しない。……いや、できないのか?
「違うんだ兄貴っ!!弾詰まりだっ!クソッこんな時にっ」
震える手でガチャガチャといじくりまわしながら、サブも後退する。でも彼女はそれよりも大股に近付いてくる。そしてまた楽しそうに顔を歪めた。
「サブゥ、その“プラスチック・バンバン”は昨日の晩、パイナップルジュース漬けにしてあるのさ。喜べよ、甘い香り付きだ」
その言葉に俺は思わず吹き出した。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時