君がため

家出の理由 ２ ページ38

かぶき町へ向かえば、最近できたという大きめの団子屋の前で、姫様と見覚えのあるチャイナ娘が座ってお団子を食べていた。


何で神楽と姫様が一緒に居るんだ。




近付くにつれて、２人の会話が耳に届く。




「女王サンはいいですね。自由で。……私、城からほとんど出たことがないから。友達もいないし、外のことも何もわからない。私にできることは遠くの街を眺めて思いを馳せることだけ……あの街角の娘のように自由にはね回りたい、自由に遊びたい、自由に生きたい。そんなこと思ってたら、いつの間にか城から逃げ出していました」




家出の本当の理由は、コレだったのか。


こりゃ確かにトシの言う通り、私達なんかにゃ想像も出来ない。




「でも、最初から１日だけって決めていた。私がいなくなったら、色んな人に迷惑がかかるもの……」


「その通りですよ」


「さ、帰りましょ、姫様」




でもだからと言って、このまま好きにさせてあげるワケにはいかない。




私達が声をかけて、悲しそうに俯きながらも姫様が立ち上がり、こちらへ来ようとした時。


神楽が、その手首をガッと掴んだ。




「何してんだテメー」




トシの怪訝そうな声にニタッと笑って、彼女は姫様の手を引いて走り出した。




「オイッ待てっ！！ 確保！！」




神楽達が逃げた先には、ウチの隊士が大勢潜んでいる。


にも関わらず、彼女は猪突猛進、車を踏み台に屋根へと跳んだ。

楽しい日→←家出の理由

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す