Case.51 ページ11
そういえば、組織にいた頃使ってたセーフハウスに、数冊置いてた気がする。
出しっぱなしにしてたから、呆れたバーボンが片づけてくれたこともあったっけ。
「まぁ、もしかしたらすでに観てしまっているかもとは思ったんですが…どうやらまだのようでしたので、いてもたってもいられず」
へら、と笑って頬を掻き、零はエプロンのポケットから本当にチケットを取り出していた。
エプロンに入れてたってことは、誘うタイミングを計ってたってことだ。しかも、いつ買ったのかは知らないけど、少しヨレているから数回はポケットの中で1日を終えているはず。
零が狙ってここまでするなんて思えない。ってことは、本当に私と行きたくて衝動買いした…？
──あのバーボンが。
「…ふっ」
「…A」
思わず吹き出したら、零が半眼になった。
「笑うなんて酷いじゃないですか」
「だって…言い出すタイミングなんていくらでもあったじゃない…」
すげなくあしらっていたとはいえ、外堀を埋めるレベルでアピールしてたんだから。
すると、零はムスッとした顔で視線を逸らした。
「…好意を抱いてる女性を初めてデートに誘うのに、そんな理由で断られたくなかったんですよ」
「ふぅん？」
こういうところは可愛いのよね。
「…それで、返事は？」
「んー…」
別に、映画くらいは行ってもいい。けど、やっと優位に立ったから、もう少し堪能したい。
「メリットは？」
「僕なら車を出せますし、荷物持ちもします。他に行きたいところがあれば付き合いますし、何より映画の感想をいち早く言い合えますが、どうです？」
なかなかの好条件だけど、零ならそれくらい意識しなくてもそつなくこなすはず。
私が首を縦に振らないのを見て、零は少し考えてからにこりと笑った。
「では、安眠グッズでも探しに行きましょう」
「乗った！」
目の前のボウヤが予想外の答えに怪訝な顔をしたけど、睡眠欲に忠実な私にとっては素晴らしい提案だ。
「では、日付は近いうちにお伝えしますね」
「ええ」
そう返事をすると、零は上機嫌でカウンターへ戻っていく。
向かいの席では、何か言いたげなボウヤが、空になったオレンジジュースを音を立ててすすっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 971人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました！ (2022年8月2日 2時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます！修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…！ (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです！更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください！ (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年5月19日 5時
