【本編小説】この夏は君と。 (ページ48)

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◇道の先に［御影蒼也］ページ48

例の招待状を見せて蒼也が頼み込んで見れば、意外にも親からはあっさりと許可を貰えて今に至っている。でも流石に勉強しないのはまずいからと、既に結構荷物が入っていたリュックサックに大量の参考書を突っ込まれてしまったのは不覚である。天体望遠鏡が壊れてないかどうかが心配だ。

重いリュックサックを肩に掛け直してひたすら歩く。クルーズ船が見えてきたときに腕時計を見ると集合時間ピッタリくらいであった。なかなか自分天才じゃないかと思ったのは内緒だが。

近くまで来たところで、蒼也は少し驚いた。
なぜなら集合場所に大半の人が集まっていたからである。

本当ならばこれが当然なのだろうが、如何せん彼の友達といえば集合時刻を守らない人が殆どなので、彼にしてみればこれは珍しい光景である。

「……すごいな」

まだクルーズ船に乗らなきゃいけないと言うわけではなさそうなので、手近なところに思い荷物を置く。どすん、という重い音がしたためか、それとも蒼也の存在に今気づいたからなのか──多分両方だろうが──水色の髪の人が一瞬、ぎょっとしたように彼を見た。

が、すぐに笑顔を浮かべて手を差し出してきた。

「もしかして、君もあの島に行く人かな? 僕は里村水月。同じ船に乗る予定だからよろしくね」

「俺は御影蒼也。……よろしく」

水月から差し出された手は基本視野の狭い蒼也の目には入らず、握り返すことなく彼は応えた。

そしてすぐに水月の顔から視線を逸らす。

島ではどんなことが起こるのだろう。
そんな柄でもない期待と不安を抱えながら蒼也は空を仰いだ。