【本編小説】この夏は君と。 (ページ24)

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「ごめん陽斗！…怒ってる…？」

「いいよ怒ってないし。それよりさ、聞いて。燐佳のめっちゃ可愛い話」

へらへらとした笑顔の此奴はかなり彼女にお熱だ。私を含めた四人との温度差にまだ気付いていないのか、にやけた顔のままスマートフォンの中にある彼女とのツーショット写真を見せる。
相手はこんな野郎には勿体無い程の美人さん。

「…母さんに送っとこ」

黄緑色のシンプルなスマホケースに入ったスマートフォンで手紙、鍵、写真を一枚一枚フォルダに保存し、家族全体のグループチャットに貼り付ける。ついでに兄のにやけ顔も。封筒の中に写真に収めた物を再び戻した。
此処行きたいんだけど…という簡素な文も付け加えて電源を付けたまま自室に向かう。

一応畳んだ掛布団の上からベッドにダイブする。ふかふか、なんて程遠い軋みを上げて骨組み部分が金属音を立てる。間違っても腕を打ち付けるものじゃない。
右腕にじわりと広がる痛みを摩りながら某サバイバルゲームのアプリを開く。

愛着の湧いて来たアドゴニーヘアのキツめのおっさんでライフルで相手のヒットポイントを緑から黄色、赤に狙撃で変えていくのはなんとも気持ちが良い。

ハンドガンに武器を持ち換え、近距離戦に転じた所でグループチャットからの通知。瀕死間近になりながらも相手に一発入れて屠り、グループチャットに飛ぶ。

両親は休憩時間でも無理矢理作ったのだろうか。いつもなら二十時を過ぎなければ返信が来ないのに、いまはまだ十八時。

母からは行ってくれば？弁当は恭平が作れるでしょ、という兄任せだが賛同のメッセージ。父からはいやに気持ち悪く動く白熊のオッケー、というスタンプ一つ。一人娘が旅行＿と言って良いのか分からないが＿に行くのにこの軽さだ。冗談だと思ってふざけているのだろうか。

まぁ我が家はほぼほぼノリで生きている。
質言を取った証拠に画面をスクリーンショットし、友人との個人チャットでスタンプを八十個程送りつける。因みに、父が送って来たスタンプと同じシリーズだ。

「あー…なんか急に楽しみになってきた。早く夏休みになんないかな」

ゲーム画面に舞い戻ったアドゴニーは鼻歌を歌いながら操作をする私に合わせる様な軽やかな動きで鉛玉を打ち込んでいく。
六年打ち込めばそれなりに誇れるランクに名を刻んでいた。ただ、そろそろユーザ名を変えようか。