混血皇女【オリジナル】 (ページ21)

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愛しきキミと 3 ページ21

飛鳥は知っていた。この今抱く感情が、嫉妬という名の醜い感情だということを。

「実の弟に嫉妬って……なんだよ、ホントに…」
「本当は、愛しているのに……。」

襖越しに聞こえたその声は、愛する者の耳にもちゃんと届いていた。

「ごめんね、気付かなくて。」

その晩は新月の夜だった。
月の明かりはいつもよりもなく、暗い夜だったとも言えるだろう。

｢飛鳥、ごめんね、入るよ｣
｢っ…羽菜、いいよ、大丈夫｣

彼らなりの、仲直りだったんだろう。
2人で肩を寄せ合って、涙を流していた。

｢強くなくちゃ、いけないのにな｣
｢いいんだよ、飛鳥は飛鳥のままで｣
｢そういうもんなのかな…｣

涙は誰かを強くする。
それはきっと、人間と妖の中でも例外じゃないのかもしれない。

｢飛鳥、僕、もう疲れた…本当ので寝ても、いい？｣
｢あぁ、ゆっくり寝たらいいと思うよ｣

ポフッと音がした。人間の姿から狐の姿へと変化して、今は全長30cmくらいの小さな小さな子狐になった。

｢人間ならもう大人に近いけど、妖狐の中ではまだ小さな子供なんだよな、羽菜も。｣

その腹には子を宿している。
何だか不思議な感覚だ。お腹の大きさが変わらないので、もしかしたら彼女が狐へと変化することによって、子供も狐へと変化してるのかもしれない。

物思いにふける、ある中夏の夜。