飛ぶ鳥の想い 2 ページ16
「飛鳥、様。」
「なんだい?蓮月。」
そうやって、声を掛けさえすれば、頭を撫でてくれる。優しい声色が胸に溶け込むように染みていく。
いつしか少女は少年の存在を求めていた。
吉原に訪れる客というのはいつも道具扱いをする。というのも、身体を弄ばれることが吉原(ここ)の商売だからなのだが。
そして、少女は自分を自分として受け入れてくれる少年、飛鳥に好意を抱いたのだ。
…いや、『愛している』の方が適切なのだろうか。
「…愛してる。」
「私も…愛して、おります……」
そう、2人で紅く頬を染めながら言った夜もあった。
毎晩のように現れ、何事も無かったかのように消えていく彼は、まるで蜃気楼のようだと思う日もあるほどだ。
少し卑猥な話になるが、本当は決まりで、避妊しなければならない。それでも蓮月は、飛鳥が来る度にわざとそれをしなかった。
「しなくていいってことは、激しくやっちゃっていいんだよね。」
「蓮月が、悪いんだよ。そんな唆(そそ)る顔してさ。
ホントは標的にしなきゃいけないのに。」
初めて出会ったあの日の、妖艶で美しい低音の囁く声は甘くとろけてしまうほどに脳裏に焼きついたままで。
数ヶ月の時が経ち、ある時告げたのは。
そう、紛れもなくアレだ。
「妊娠したかも?」
「……他の方の相手をする際は皆、……避けてはいるのですが。」
少し時間をおいたが、なんとか答えられた。
そして彼はにこやかにこう言った。
「ちょっと、待っててね。」
月夜に照らされた彼の顔はいつにも増して綺麗だった。
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作者名:みりんちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fbkkydi/
作成日時:2014年11月23日 21時