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L.K
夢を、見た。
冷たい真っ暗闇の中で泣きじゃくる、幼い自分。その左目から流れる真っ赤な血だけが、唯一その場で鮮明に分かる色で。
何つー夢だよと心の中で吐き捨てた。こんな夢を見ることなんて、無かったはずなのに。耳に届く泣き声が、酷く鬱陶しい。
黙れと叫びたいのに、声が出ない。耳を塞ぎたくても、身体が動かない。
そんな時、歌が聞こえた。
『〜♪〜〜〜♪〜〜♪』
酷く懐かしいような歌声は、泣き声をかき消すかのように俺に届く。先ほどまでいたはずの真っ暗な場所が、光で溢れる明るい場所に変わっていた。
歌声は尚も続く。世間では子守唄と呼ばれるそれは、此方に語りかけるような温かさだ。夕焼けの草原のものではないその子守唄は、ずっと続いている。
よくお眠り、あなたは私の可愛い子。たくさん眠って大きく育て。愛しい我が子、腕に抱かれてゆっくり眠れ。誰にもーーー。
そこまで聞いたところで、目が覚めた。微睡む意識の中で周囲を見れば、ルイスが俺の腹をぽんぽんと叩きながら歌っているところで。……肉食動物の腹をんなに気安く触んな。
「……ガキ扱いしてんじゃねぇよ」
そう言って身体を起こせば、ふわりと笑いながら挨拶なんてして。そのままクルーウェルも交えて三人で話をした。話の中心をクルーウェルのピアスにして、そうしないと何故か。みっともない姿を見せてしまいそうだった。
やがて二人は植物園を後にする。その時に、ルイスが俺の頭をぐしゃりと撫でた。乱雑で、それでいてどこか優しい撫で方で。
あぁ、そうだ。夢を見ている間も、誰かに頭を撫でられたいた。優しくて、温かい手で。それで。……それで、あの声で歌うのだ。愛おしいという感情が込められた声で、可愛い子だと。愛しい我が子だと。
「……誰にもあなたを、傷付けはさせない」
ひく、と喉が鳴った。うまく呼吸が出来ない。鼻の奥がつんとして、目頭が熱くなってくる。
自分の身体の変化が、よく分からなかった。それと同時に、何だか複雑な感情が胸を支配する。嬉しいのか、寂しいのかがよく分からない感情。
やがて頰を伝う水で自分が泣いているのだと気付いた。目から流れ落ちた涙は頰を通って顎へ、それから地面にぽたぽたと落ちていく。
自分の身体が自分のものじゃないみたいで、止まることを知らない涙はずっと流れ続ける。
結局、俺が植物園を出れたのはそれから一時間後のことだった。
微睡のなかでー完ー。
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あいらいん - なんでこれ公式じゃないんだろうって思うくらい好き (2023年4月4日 10時) (レス) @page43 id: c168593882 (このIDを非表示/違反報告)
硝子ーtengitune.(プロフ) - このラジオに出れるなら私は最近泣いたの所に「プリ〇ュアで泣いた」って言いそう (2021年9月25日 20時) (レス) @page36 id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
チーズ鍋 - 碌無者さん» 完全な手違いですね……。消そうと思っていた方じゃない方を消してしまって……。ありがとうございます(ノД`) (2021年9月24日 7時) (レス) @page1 id: 067328da22 (このIDを非表示/違反報告)
碌無者(プロフ) - あんなに書いてらしたのに続編が消えていて……手違いでしょうか? ご愁傷さまでございます。 (2021年9月24日 1時) (レス) @page50 id: 0a4b7a6801 (このIDを非表示/違反報告)
??? - 了解です!頑張ってください (2021年9月23日 22時) (レス) id: ae4d7ce9d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2021年9月6日 22時