恋 彼らの片思い

おーちゃんの場合　7 ページ8

｢どうした？なんかあったんだろ？｣

酔いざましの水、テーブルに置いてやる。
ソファにちょこんと座ったマルは
デカイ体縮こまらせてしょんぼりしている。

｢こんなん・・・。ホンマは言えへんけど・・・｣

呆れんでねって泣きそうな声。

午前3時すぎ。
マルの切ない恋の話が始まった。

｢好きな人がおったん｣

俺にとってはショックな話。

都合のいい時だけ呼び出されて
メシ食って寝て。
でもマルはソイツのことが好きで好きで仕方なくて
出来ることなら恋人になりたかった。
付き合おうなんて言ってもらったことはないし
たぶん、他にも寝るだけの相手がいたと思う。

最初はそれが苦しかったし
何度もやめようって思ったのに離れられなかった。

でも、そんなことを続けているうちに
ソイツが愛情を向けてくれるのがわかるようになった。
言葉にはしてくれなかったけど
ちゃんと愛してくれてるんだなって感じてた。
自分以外の影もなくなってた。
このままずっと一緒にいられる、そう思い始めた矢先。

ソイツが将来の夢を打ち明けてきた。
壮大だけど、ソイツなら絶対叶えられる夢。
自分もそれを願っていたし
夢を語ってくれたことが単純に嬉しかった。


でも同時に離れなきゃって思った。


｢そんときはお前も・・・｣
そう言われたから。


自分が側にいたら重荷になってしまう。
一緒に夢を追いかけるってことは
マル自身の生活や夢を全部手放すってことになる。
ふたりで歩いて行くことを選んだら
マルのことを思って夢を諦めてしまうんじゃないかって。

だから。
離れた。

夢を叶えてほしいんよ。
あの人にはその力があんねん。
そう言って無理矢理笑おうとしてるけど
マルの顔は涙でグシャグシャだった。

離れてもね、離れきれへん。
どうやったって繋がってるんよ。
顔合わすし、触れてしまうこともある。
大丈夫、って言い聞かせて乗り切るけど
どうしても辛いん。

辛くて、辛くて・・・
消えてしまいたくなる。

相槌打つくらいしかできなかった。

気の利いたこと言ってやることもできなかった。

俺は何にもできなかった。

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