恋 彼らの片思い

一歩　す ばる1 ページ44

あぁ。今日も曇り空やな。
軽い頭痛。
日課の散歩するのも悪くはないけど
もう少しだけぼんやりしてたい。

アイツは大丈夫やろか。
この季節が苦手やったはず。
晴れ間がなかなか見えん時季、
どうしても気分も晴れんのよ。って情けない顔が目に浮かぶ。

ひとりでおる新しい部屋にもだいぶ慣れてきたのに
不意に思い出すのはアイツのことばかり。
天気のせいやって独りごちてコーヒーメーカーの電源を入れる。



｢オマエ、今日夜空いてるか？｣

ぼんやりと空見てるマルに声かけたのは
やっぱり雨の日やった。
車の窓、ずっと眺めてるぼんやりした顔。
誰のこと思ってるのかはわかってる。

あん人と別れてから、ひとつ季節を越えて
それでも引き摺ってる。
まぁ、そりゃそうやな。
忘れようったって忘れられんやろ。
オマエの初めての男で
こん世界捨ててまで一緒になりたかった人やから。

あん時。
マルがあん人の部屋から出てきた時。

真っ赤に泣き腫らした目ぇを
ヒナに叱られたオマエは

｢えへへ。ごめんなさい。
映画見て泣きすぎてもぉたわ｣

そう言って笑ってみせた。
何があったかなんて俺らにはお見通しなんに。
ヒナと俺とヨコ。
なんとなく目ぇ合わせて汲み取った。
ちょっと離れたとこで
たつも泣きそうな顔してた。

その日の収録はグズグズになったマルを
全員で弄り倒した。
なんやろな、あれ。
マルを弄ったらんとアカンような気がした。
そうすることでマルを笑わせようとしてた。
それは、訳のわかっとらん亮もヤスも
みんなおんなじ思いやったんやろな。

それからちょっとの休みの間
アイツは誰とも連絡をとらんかった。
休み明け、浮腫んだ顔で現れた。
マネージャーにこれからは送り迎えをじぶんちにしてって
伝えてるのが聞こえた。

終わったんやな。
無理に笑おうとせんでいい。
それなのにアイツはいつもの笑顔を振り撒く。

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