恋 彼らの片思い

まつにぃの場合　23 ページ38

そんなこんなでついさっき。

先手を取られてオーノがかました後
ヘタりこんだ忠の前にしゃがみこんだ。
パーティの喧騒のなか追い討ちかけてやった。
俺とオーノ。
なかなか手強い相手だと思うぜ？

呆気に取られてポカンとしたクマ。

｢幸せにな｣
なんて肩叩いてやったら
妙に清々しい気持ちになって笑いが込み上げてきた。

ははは

自分でも驚くくらいの笑い声。
あー。気持ちいい。

フラれたぞー。俺。

パタパタとダンナに走り寄るマル。
抱きしめる忠。
キスまでしやがって。

もう胸が痛むこともない。
俺はマルが幸せにならそれでいい。

フワフワと優しく漂う歌声。
マルが歌う甘いラブソング。
柔らかな時間。

ヤツらが併せたスーツはヤツらによく似合ってた。
可愛らしくて、でもアイツらにしか着こなせねぇような。
同じようだけどちょっと違う。
ひとりでも成立するのに、
二人並ぶとさらにお互いが引き立つ。

いい相手見つけたな。
なんて言えばいいだろ。

ニコイチ。

マルと忠にはこれがしっくりくる。
入る隙間、ねぇじゃん。

好きだよ、って繰り返すマルの声。
はいはい。もうわかったよ。
あーあー。見つめあっちゃって。

オーノもおんなじように苦笑いしてる。
これ見ちゃったらもう笑うしかねぇよなぁ。

ちりん。

ポケットのなかで小さく鈴の音がする。
あの日から俺のポケットには
いつでも古ぼけたキーホルダーが入ってる。

ちりん。

約束なんてもう忘れてるだろ。

幸せにな。マル。
俺の大事なマル。

愛してるよ。

戦友と合わせたグラス一気に空にして
大切なもん、中に落とした。

鈴はもう鳴らない。

恋の終わり。

ちりん。

背を向けた俺に名残の音がした。

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