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スノーシティ。
11月から年明けにかけて、冬の厳しいこの街では冬の終わりを祝う祭りがある。
まだ少し積雪が残る2月半ば。
『春雷祭』と呼ばれるその祭りは3日間行われ、その期間、大人から子供まで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだ。
そうしてみんなで陽気な春を出迎えるのだ。
Aの所属するジャーミオーケストラも春雷祭3日目、中央広場にある市役所の大ホールで演奏会を毎年開催していた。
この演奏会がジャーミオーケストラにとっては年間で一番大きな本番になる。
年も明けた今、その大事な演奏まであと2ヶ月を切っていた。
「何ふてぶてしい顔してやがる。」
いつものように夜明け、湖畔でチェロを弾いていると師匠ことイズナピが後ろから声をかけてきた。
深く積もった雪が彼が進む度にサクサクと音を立てた。
「いつもチェロを弾いてる時は、嬉しそうな顔してるくせに。エラく御機嫌斜めらしいな。」
「…手がかじかんで弾けなくてイライラしてるだけです。」
「そりゃそうだろ。バカなのか?べつに小屋で弾いてもいいって言っただろ。」
そう言いながらイズナピはAの隣に座った。
東の空が白く染まっていた。もう地平線の先では日の出が覗いたのだろう。
「最近それ弾いてる時、違うこと考えてるだろ。」
「っ、……うるさいなぁ、そんなことないし!音楽に興味無い師匠に関係ないでしょ?」
「な!師匠に向かってうるさいとはなんだ!」
「もう!!ちょっと黙っててよ!」
Aは弓を構えて、弦に添えた。
すうっと冷たい空気を吸い込んでから弓を引き、音を出す。
そうするとチェロは素直に音を出してくれる。
凍えるような冷たい世界に温もりを持つ木の音色が響いた。
バッハのチェロ組曲prelude。
が、すぐに音を間違えてAは舌打ちをした。
クロロがこの街を出てもう3ヶ月になる。
「(1ヶ月で戻るって言ってた癖に…)」
心の中で何度そう悪態をついたことか。
練習も佳境に入り、木曜日以外も街に訪れることが増えたAはその度に必ず公園にも顔を出した。
しかし、そこにクロロの姿を見たことはない。
何か危ないことに巻き込まれたのだろうか。
そんなに危険な仕事なのだろうか。
そんな不安だけが雪のように心に積もっていく。
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時