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「それで、今日の演奏はどうだった?」
演奏を終え子供たちの背を送りながらAはクロロに問いかけた。
クロロは「今日もよかった」と笑みを浮かべながら言う。
最近はクロロとお茶する時間も考えて、この小さな演奏会は早めに切り上げることが多くなっていた。
といっても30分くらいはAが弓を離すとはないけれど。
「特に『誰も寝てはならぬ』がよかった。」
「私もその曲好き。オーケストラのは聞いたことある?歌ってるやつ。」
「いや聞いた事なかった。オペラの楽曲っていうのは知ってたんだが…確か『トゥーランドット』だったっけ?」
「そうそう。やっぱり歌劇用の曲だから歌に勝るものはないよ。」
「そうか、今度聞いてみるよ。」
「ぜひ聞いた感想教えてね。」
最近クロロは理屈屋っぽく喋ることが増えた。
いや、彼は理屈屋だから間違いはないんだけど、出会った当初のフランクな喋り方とは少し違う。
「A、携帯電話って持っていたか?」
チェロを仕舞う振りをしながらケースを閉じた時、Aはそう問いかけられた。
「え、携帯電話?持ってないよ。」
「やはりそうか」とクロロは顎に手を当てふむ、と頷く。
彼があまり表情豊かでないことも最近気づいた。
黒い瞳は揺れることなくそこに沈殿している。
もちろん多少の機微を察することは出来るのだが、やはり出会った頃の彼のイメージとは離れていた。
話し方も表情も、きっとこちらがクロロの素なのだろうとAは思う。
彼にとって心の置けない友人になった証拠なのだとしたらなんと嬉しいことだろうか。
それに、Aは最初の手慣れた感じのクロロより今のクロロの方がよっぽど居心地がよかった。
「よし。買いに行こう。」
クロロは立ち上がりながらAのチェロケースを担いだ。
どうやら持ってくれるらしい。
「それってもしかして今からってこと?」
「そうだ。」
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時