【H×H】音色と恋色。【クロロ=ルシルフル】

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朝日が昇る頃にAは起きて、身支度を整えると湖のほとりへ出た。

うすくはった霧がだんだん顔を見せる朝日の色に染まっていく。

Aは大きく伸びをした後、降りたたみ用の小さな椅子を出しそこに腰掛けた。
そしておもむろにオーラを左手に集中させる。


『〜私の愛情表現(ｱﾓﾛｰｿ･ﾏｲｿﾝｸﾞ)〜』


私が始めて作った念能力。
Aが小さく唱えると、左手に集められたオーラはチェロへと変化していく。
同時に右手にも弓が現れた。

前の世界での私の相棒、あの事故で燃えてしまったチェロをそっくりそのまま具現化する能力だ。




弓を構えて、すぅっとブレスをとる。
この瞬間が好きだ。
緊張感と期待感が混ざるこの感じ。





Aは優しく弓を引いた。
低音が響き、水面を揺らした気がした。


奏でるのは、ジブリの「もののけ姫」の映画の作中曲、『アシタカせっ記』だ。
Aはいつもこの、森に囲まれた湖に朝日が昇る時、その曲を思い出す。

こんなにも素晴らしい曲なのにこの世界の人は誰もこの曲を知らない。
この世界でのクラシック音楽とは、19世紀ぐらいまでの西洋音楽を指すらしい。
残念なことに、久石譲さんが存在しない世界なのだ。





朝特有の冷えた清々しい風が吹く。





Aはワンフレーズを弾き終えると、また大きく深呼吸をした。

今度の楽団の定期演奏の練習をしないと。
次回公演はベートーヴェンの交響曲3番「英雄」を演奏する。

楽譜を取り出そうと、Aはもう1つの念能力を発動した。



『〜際限なき楽譜帳(ﾌｫｰｴﾊﾞｰ･ﾀﾞｲｱﾘｰ)〜』



今度は右手にオーラを溜めると、A4サイズのドキュメントファイルが現れた。
中を開くとポケットがａ〜ｚまで並んでおり、そこに楽譜が収納されている。

この念能力は名前の通り「楽譜なら永遠に収納し続けること」が可能だ。


Aはお目当ての「英雄」の楽譜を探し当てると『収納(ｽﾄﾚｲｼﾞ)』と唱えた。

透明なドキュメントファイルは消える。

この能力があると楽譜の持ち運びや整理がとても便利だ。
楽譜なら分厚いスコア本だって収納可能。
汚れる心配もない。



なんて便利な能力なんだとAは自画自賛しながら、譜面台に楽譜を立てかけた。

もう半分ほど現れた朝日がAの顔を照らす。

いつも通りの一日が始まろうとしていた。




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https://youtu.be/mZlmLYsXoOc

アシタカせっ記。
めっちゃ好きな曲です。

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