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彼女が折りたたみ式の小さな椅子に座り、黙々と準備を始めると子供たちは静かになった。
どうやらここで演奏する気らしい。
「じゃあ今日はエルガーの『愛の挨拶』の12番でも弾こうかな〜」
ここで弾いたことあったっけ?と彼女が子供たちに尋ねると、子供たちは大きく首を横に振った。
「そっかそっか。じゃあおねーちゃん、本気で弾くわ。」
女はそう言いながらスっと弓を構える。
そして何度か息を整えるように吐くと、一度微笑んで、大きく息を吸った。
その瞬間、通り抜けるように深い低音が耳に入る。
離れた場所にいるのにその音は脳内に響いた。
木を感じる、暖かい音だ。
彼女が弓の角度を変える度に魔法のように音が変わり、それが旋律になっていく。
聞いた事のない曲だったが、何故か懐かしい感じがする。
旋律に耳を傾けると、風が木の葉を揺らす音、鳥の囀り、自身の鼓動、それらが全て聞こえた。
不思議な感覚に陥る。
彼女の旋律に集中すればするほど、自然を近くに感じるのだ。
彼女の黒い髪がサラサラと揺れる。
目を閉じ、音楽に全てを捧げるように彼女は微笑む。
クロロはほう、と感嘆の息を吐いた。
青々とした芝生が揺れる、初夏の訪れを感じさせるような爽やかな昼下がり。
この自然に包まれた舞台は、彼女が奏でるためにあった。
そんなふうに思えるほどに洗練された演奏だ。
「(…美しい。)」
音楽に対する感想としては少し違う気がするが、クロロはそう思った。
「…(欲しい)」
喉から手が出るほどに。
彼女の創り出すこの瞬間が。
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https://youtu.be/A67eB3WWhYk
愛の挨拶op.12
この音源はヴァイオリン演奏ですが、素敵な曲なのでぜひ聞いてみてください〜
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時