087 主さま ページ43
雨よりも速く落ちてきた物に、誰もが驚きのあまり硬直した
それは庭に突き刺さると同時に爆風を周囲に飛ばし、香りを――美しい薔薇のそれを敵と仲間に届けた
風がやみ、全員が、庭の真ん中に真っ直ぐ立っている青薔薇の剣を見た
敵は想定外だと言うふうに、表情を強ばらせた
仲間は闇の中に光を見つけたかのような雰囲気だ
亜麻色の髪は見えないが、どこからか声が聞こえた
「リリース・リコレクション」
武装完全支配術を発動させる式句、"エンハンス・アーマメント"を唱えることは無かったが、青薔薇の剣の記憶解放術は発動し、剣が青く光り始めた
まず剣の近くの雨粒が空中で動きを止めてこおった
氷は剣を中心にぐるぐると回りだし、だんだんと速度を上げていく
周囲の気温がぐっと下がり、霧が視界を奪った
その霧も、氷の回転によって動き始めた
もはや横殴りの風となった霧と氷は、剣のもとに集まって行く
気体は液体へ、液体は固体へと姿を変えながら、本丸中の水蒸気を集めたと思った時――
自らの圧力に耐えかねたかのように、大量の氷が上空に飛んだ
姿を現した剣がリィィン……と音を響かせる
ひとつひとつは花の種子並の大きさだが、その両端は針のように尖っている氷は、ジャキッ!
と音を立てて一斉に先端を敵に向けた
「……ッ!!」
彼女の無音の気合いが聞こえた時、氷たちは一直線に遡行軍のもとへ向かった
しかし、それで簡単に倒れるほど、この遡行軍たちは弱くない
身体中に大量の小さな穴を開けながらも突進してくる遡行軍を見て、男士たちは臨戦態勢に入る
だが、遡行軍の武器が振り下ろされる直前、身体に開いた穴から氷の弦が伸びてきて、遡行軍たちの動きを封印した
「おやすみ」
その一言で弦に蕾ができて花が咲いた
花は種子を作り、地に落とした
そこから生えた弦が男士たちに伸び、彼らの傷を癒していった
奇襲を仕掛けた遡行軍は青薔薇の剣によって抹殺され、昨日から降っていた雨は静かに止んだ
ようやくアスナたちの前に姿を見せた青薔薇の剣は、嬉しそうに笑い、
「ただいま帰還しました、主さま!」
そう言った
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白(あきら)(プロフ) - 銀狼さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年10月13日 23時) (レス) id: 46e374d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつもいつも楽しみにさせて頂いております!これからも更新頑張ってください! (2019年10月13日 10時) (レス) id: c5721a90b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白(あきら) | 作成日時:2019年10月13日 2時