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『ん? 今何か物音がしなかったか?』
『さあ、聞こえませんでしたけど』
Aの叔父にあたる男の話し相手……佐々木異三郎は立ち上がり、目の前に座る男を見下ろした。そうして「それでは」と淡白に別れを告げ、一ノ瀬屋を出て行く。
店から数メートルほど歩いた先で胸元から携帯を取り出し、器用に弄っては電話をかける。
『もしもし?』
佐々木の電話の向こうにいる人物は、「何の用ですか」と彼に問う。その質問に苦笑を浮かべた佐々木は、「ご報告です」と話し始めた。
『作戦と言って良いのか分かりませんが、まあ上手くいったと思いますよ』
『そうですか。ご報告ありがとうございます』
佐々木の電話の相手は武市であり、彼は「それでは」と電話を切ろうとするも、佐々木に引き止められる。
少し耳から離した受話器を、武市は再び耳に寄せた。
『エリートをこんな事のために使うとは、さすがですねェ』
『……まだ焼きそばパン買って来いと言われた方がマシです』
『晋助殿はコロッケパン派ですから』
そう言って容赦無く武市は電話を切ってしまう。とっくに切れている電話をしばらくの間耳に当てていたが、佐々木は「そうでしたか」と呟きながら携帯を閉じる。
以前佐々木はAの父親と叔父のことをカインとアベルの逆転だと例えたが、彼はもっと別物だと考え直す。
兄を殺した弟。その弟に刻まれた刻印は、誰にも殺されないなんて生易しいものではなく、攘夷志士の中で最も過激で危険な男に地獄へ突き落とされる招待状だった。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時