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『わざわざ私を使う理由は何なのか考えていたのですが……』
佐々木は擦れ違った笠を目深に被る男の足を止めるために、その男にだけ聞こえるくらい小さな声で話し始める。
思惑通りに足を止めた男、高杉晋助はチラリと横目で佐々木を捉えた。
『ようやく分かりました』
『可笑しいと思ってたんですよ……』
クスりと不敵な笑みを浮かべた佐々木はまだ雨粒を落とす空を見上げる。彼らの横を傘をさす人々は通り過ぎていくが、その誰も彼らのことを気にしていない。
まるで二人きりのような空間に、更に佐々木は一笑を漏らす。
『本当は直ぐにでも殺してやりたかったはずなのに』
『本当はあの男になんか会わせたくなかったのに……』
『理由も無しに人を殺す男だと、思われたくないですものね』
見透かしたような目を向ける佐々木を高杉は鼻先であしらい、何も言わずに足を進めた。その背中を見送ることはせず、佐々木は高杉とは反対方向へと歩いていく。
雨は次第に弱まり始めていき、狐が無事嫁入りを果たしたと言わんばかりの大きな虹が空に架かる。
高杉は笠の縁を摘見上げ、それを眩しそうに目を細めながら見つめては笠を被り直して再び歩き出した。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時